肝機能の指標として重要な検査
AST(GOT)、ALT(GPT)
AST(GOT)検査の概要
AST(GOT)は、体の重要な構成要素であるアミノ酸の代謝にかかわる酵素です。体をつくるほとんどの細胞に含まれていますが、とくに肝臓、心筋、骨格筋の細胞に多く存在しています。採血によって調べます。
AST(GOT)検査の判定値
特定健診の判定値
- AST(GOT)(U/L)
- 保健指導判定値:31U/L以上
- 受診勧奨判定値:51U/L以上
日本人間ドック学会の判定値
- AST(GOT)(U/L)
- 異常なし:30U/L以下
- 軽度異常:31〜35U/L
- 要経過観察(生活改善・再検査):36〜50U/L
- 要治療・要精検:51U/L以上
ALT(GPT)検査の概要
ALTは、ASTと同様、体の重要な構成要素であるアミノ酸の代謝にかかわる酵素です。とくに肝臓に多く存在しています。採血によって調べます。
ALT(GPT)検査の判定値
特定健診の判定値
- ALT(GPT)(U/L)
- 保健指導判定値:31U/L以上
- 受診勧奨判定値:51U/L以上
日本人間ドック学会の判定値
- ALT(GPT)(U/L)
- 異常なし:30U/L以下
- 軽度異常:31〜40U/L
- 要経過観察(生活改善・再検査):41〜50U/L
- 要治療・要精検:51U/L以上
AST(GOT)・ALT(GPT)に関連する主な病気
AST、ALTともに高いと肝機能障害が疑われます
肝臓にはAST、ALTがともに多いため、肝機能に障害が起こると、血液中に増えてきます。そのため、AST、ALTともに高値になると、肝機能障害が疑われます。ただし、ASTは、心筋や骨格筋にも多いいっぽう、ALTは主に肝細胞中に存在しているため、その値を比較することで、病気や進行度なども判断します。
AST、ALTの比較で疑われる病気
- AST、ALTが高度に上昇→急性肝炎
- AST、ALTが長期にわたり高値→慢性肝炎、脂肪肝
- ASTのみ高値→心筋梗塞、筋肉疾患
ASTのみ高いときは、肝機能以外の障害が疑われます
ALTのみが高値のときは、軽度の肝機能障害が疑われます。ASTのみが高値のときは、肝機能以外の障害が疑われます。心筋疾患や筋疾患などを考えますが、激しい運動をすることでも値が上昇することがあります。AST検査の前日、当日のはげしい運動は控えましょう。
また、AST、ALTとも病気以外ではアルコールの飲み過ぎ、肥満、服用中の薬剤などでも高値になることがあります。
肝機能障害の予防・改善ポイント
- 肥満があれば改善を
- 食生活改善で肝臓の負担を減らす
- 食べ過ぎないようにする
- 野菜をたっぷり、たんぱく質は多めに、ごはんやパンなどの糖質は、控えめに
- アルコールは適量を心がける
- ※すでに、肝硬変を起こしている人は、禁酒が必要
- 適度な運動を習慣に
よくある質問Q&A
- お酒を飲まなくても、高値になるの?
アルコールに関係のない脂肪肝も起こります
肝臓に脂肪が多くたまった状態が脂肪肝で、お酒をあまり飲んでいないのに肝臓に脂肪がたまってしまう非アルコール性の脂肪肝もあります。食事から糖質をとり過ぎたり、運動不足では、余分な糖質が体内で中性脂肪に変化し、これが肝臓に蓄積して脂肪肝が生じます。脂肪肝は、非アルコール性の場合でも、進行すると肝炎や肝硬変、ひいては肝臓がんに至ることもあります。非アルコール性の脂肪肝では自覚症状がない場合がほとんどです。また、お酒を飲まないから肝臓病とは無関係というわけではありません。糖質を控えて適度な運動を生活のなかに取り入れるなど、生活習慣病を予防することは、肝臓病の予防にもつながります。
監修者プロフィール
- 監修
- 和田高士(わだたかし) 医師
- 東京慈恵会医科大学大学院医学研究科健康科学 教授
- 1981年東京慈恵会医科大学卒業、2008年東京慈恵会医科大学 総合健診・予防医学センター教授を経て、現、東京慈恵会医科大学大学院医学研究科健康科学教授。日本肥満学会評議員、日本動脈硬化学会評議員、日本臨床検査医学会管理医、肥満症診療ガイドラインの執筆も担当。日本人間ドック学会では、理事を務める。