家庭の医学 大全科

健診・人間ドック 検査結果のくわしい解説とQ&A

代謝系の検査

メタボリックシンドロームを調べる第一歩の検査
肥満度(BMI・腹囲)

メタボリックシンドロームを調べる第一歩の検査 肥満度(BMI・腹囲)

BMIの概要

BMIとは、Body Mass Indexの略で、肥満度を評価する国際的な指標です。「体格指数」とも呼ばれ、身長と体重の計測により算出します。計算式は世界共通ですが、基準値は国により異なります。

計算式

BMI=[体重(kg)]÷[身長(m)]÷[身長(m)]

※身長はcmではなくmで計算する

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BMIの判定値

特定健診の判定値
BMIの判定値 特定健診の判定値
BMI(kg/㎡)
保健指導判定値:25.0 kg/㎡以上
日本人間ドック学会の判定値
BMIの判定値 日本人間ドック学会の判定値
BMI(kg/㎡)
異常なし:18.5~24.9kg/㎡
要経過観察(生活改善・再検査):18.4kg/㎡以下  25.0kg/㎡以上

腹囲測定検査の概要

肥満のなかでも、近年、内臓周辺に脂肪がたまる内臓脂肪型肥満が健康障害を起こしやすいとして注目されています。内臓脂肪型肥満のスクリーニング方法として用いられているのが、腹囲測定です。ウエストではなく、へその高さで水平にメジャーを回して測ります。

腹囲の基準値

保健指導判定値
腹囲の基準値 保健指導判定値
腹囲(cm)
保健指導判定値:男性 85cm以上/女性 90cm以上
日本人間ドック学会の判定値
腹囲の基準値 日本人間ドック学会の判定値
腹囲(cm)
異常なし:男性 84.9cm以下/女性 89.9cm以下
要経過観察(生活改善・再検査):男性 85.0cm以上/女性 90.0cm以上

BMI・腹囲高値に関連する主な病気

BMIは「肥満度」を判定する指標の1つです

肥満とは体脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態をいいます。体脂肪量を正確にかつ簡単に調べる方法がないため、BMIが肥満度の国際的な指標として用いられています。基準値は国によって異なり、欧米では、BMIが30以上で肥満とされていますが、わが国では、25以上で肥満とされています。これは、22のときの体重がもっとも病気になりにくい状態であることがわかっており、22を基準として25になると脂質異常症や高血圧のリスクが2倍となることから定められているものです。

ただし、BMIは体脂肪量を実際に測定しているものではありません。そのため、BMIはメタボリックシンドロームの診断基準になっていませんが、特定健診・特定保健指導の判定基準として用いられています。

腹囲はメタボリックシンドロームの判定基準の1つです

メタボリックシンドローム(以下、メタボ)とは、内臓脂肪型肥満に加え、動脈硬化の危険因子を複数合わせもった状態をいいます。各因子単独では「病気」とまではいえない状態でも、複数重なると生活習慣病に対するリスクが急速に高まるため、重要視されています。内臓脂肪型肥満の判定基準の1つとして特定健診で用いられているのが、腹囲です。肥満治療においては、腹部CT検査によってへその位置で内臓脂肪面積が100㎠以上ある場合に内臓脂肪型肥満と診断されます。腹囲の基準値(男性85cm、女性90cm)は、この内臓脂肪面積100㎠に相当することがわかっているものです。

腹囲の正しい測り方
  • 腹囲はウエストのくびれたところではなく、おへその位置で水平にメジャーを回して測ります。
  • おなかの脂肪が多く、おへその位置で測りにくいときは、肋骨の下の骨先と骨盤の出っ張ったところの中心を測るようにします。
肥満予防・改善のためのポイント

運動+食生活改善をできるところから始めよう

運動を生活に取り入れるためのヒント
  • 今より10分多く歩こう
  • できるだけエレベーターなどを使わずに階段を歩く
  • 車での外出時は、目的地から少し遠いところに駐車して歩く
  • 会社や買い物などの帰り道で少し遠回りをする
  • 昼食後、20~30分食休みしたら、10分歩く
  • 生活のなかで軽い筋トレを
  • 歩きながらドローイング(おなかをへこませて5〜30秒キープを繰り返す)
  • 電車に乗りながら、片足ずつかかと上げ
  • テレビを見ながら、スクワット
  • 夜寝る前に腹筋運動
  • 電話をかけながら、ペットボトルでダンベル体操 など
食生活改善のヒント
  • 食事は3食規則正しくとる
  • まず、野菜から食べるようにする
  • 一口食べたら、はしを置き、30回かむ
  • 腹八分目を心がける
  • 就寝前、2時間程度はできるだけ食べないようにする
  • 飲酒は控えめを心がける など

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よくある質問Q&A

肥満が病気の原因になるの?
動脈硬化の大きな原因です
肥満で、近年とくに問題になっているのが、メタボです。メタボとは、内臓脂肪型肥満に、複数の動脈硬化の危険因子を合わせもった状態をいいます。内臓脂肪型肥満の場合、肥大した脂肪細胞から分泌されるさまざまな生理活性物質が、高血圧、脂質代謝異常、高血糖などを引き起こし、動脈硬化を進行させます。動脈硬化は、虚血性心疾患(心臓に血液を送る冠動脈が狭くなって起こる狭心症、冠動脈が詰まって起こる心筋梗塞)、脳血管疾患などの病気につながっていきます。
肥満で問題なのは、メタボ関係の病気だけ?
関節への負荷増や月経異常などの問題もあります
肥満で問題になってくるのは、メタボ関連の病気だけではありません。月経異常や不妊、睡眠時無呼吸症候群、ひざや股関節などの変形性関節症も肥満に起因する健康障害とされています。また、一部のがんや認知症も肥満症の人には起こりやすいことがわかってきました。
やせていれば、問題ないの?
やせすぎも要注意です
若い女性にやせすぎの人が多いことは問題になっています。低栄養などによる月経不順や無月経は、妊娠・出産にかかわる問題につながります。鉄欠乏性貧血は、だるい・疲れやすいといった症状を引き起こします。また、中高年以降も骨粗しょう症の原因となったり、筋肉が少ないため転倒しやすく、寝たきりの誘因になったりするおそれがあります。免疫力の低下にもつながり、かぜなどの感染症にもかかりやすくなりかねません。
監修者プロフィール
和田高士 医師
監修
和田高士(わだたかし) 医師
東京慈恵会医科大学大学院医学研究科健康科学 教授
1981年東京慈恵会医科大学卒業、2008年東京慈恵会医科大学 総合健診・予防医学センター教授を経て、現、東京慈恵会医科大学大学院医学研究科健康科学教授。日本肥満学会評議員、日本動脈硬化学会評議員、日本臨床検査医学会管理医、肥満症診療ガイドラインの執筆も担当。日本人間ドック学会では、理事を務める。