夏型過敏性肺炎─夏・家の中で出る咳の原因はカビかも!?
夏型過敏性肺炎─夏・家の中で出る咳の原因はカビかも!?
2019.08.05広告
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「夏になると咳や発熱が続き、秋口には治まる」ことを、毎年のように経験している人は、夏型過敏性肺炎の可能性があります。単なる夏風邪と決めつけず、咳などの症状の出方に心当たりがある人は、早めに医療機関を受診しましょう。
過敏性肺炎の約7割が、カビを繰り返し吸い込むことで発症
過敏性肺炎は、アレルギーの原因となる物質(抗原)を繰り返し吸い込むことによって起こるアレルギー性の肺炎です。夏型過敏性肺炎の抗原にはさまざまなものがあり、日本で多くみられるのは、カビの一種であるトリコスポロンであり、過敏性肺炎全体の約7割を占めるといわれています。このため、夏でもそれほど気温が上昇せずカビが生育しづらい北東北や北海道などでは、夏型過敏性肺炎はほとんど発生していません。
過敏性肺炎にはほかにも、鳥類の排泄物が原因となる鳥飼病、干し草の中にいる細菌が原因となる農夫肺、空調や加湿器についたカビ類が原因で起こる換気装置肺炎などがあります。
「夏」「家の中」で咳が続くが、「秋」「屋外」では治まるのが特徴
カビであるトリコスポロンは高温多湿な環境を好み、夏に発症のピークがみられることから、過敏性肺炎のなかでも「夏型」に分類されています。トリコスポロンは古い日本家屋、なかでも湿気の多い浴室や台所、洗面所、押し入れ、エアコン内などに多くみられ、これらの場所で過ごす時間の長い人に発症しやすいことがわかっています。
夏型過敏性肺炎の主な症状は、咳や発熱、倦怠感などです。カビが生えやすい夏の間中や、カビが生えた家の中などにいると症状が続く一方、カビが生育しづらくなる秋口になったり、外出などでその場所を離れると症状が治まることが大きな特徴です。
軽症ですんでいるときには症状が風邪によく似ているため、見過ごされてしまうことが少なくありません。しかし、適切な治療を受けないまま、何年もの間、カビを吸入し続けていると、夏型過敏性肺炎が慢性化して咳や息切れなどが悪化していきます。
こうして、季節や場所を問わずに咳などの症状が続くようになると、肺の細胞が硬くなる線維化などが起こり、完全に回復することが難しくなるとされています。
室内の掃除を徹底し、カビの吸入を避けることが大前提
夏型過敏性肺炎を見逃さないためにも、夏になると家の中で咳や発熱などを繰り返したり、風邪のような症状が長引いたりしている場合には、早めに呼吸器科やアレルギー科などを受診しましょう。
診断には血液検査や胸部X線検査、肺生検のほか、確定診断のために意図的に抗原と接触させる誘発試験などが行われます。
治療の基本は、抗原であるカビを吸い込まないようにすることです。住居が原因の場合は、カビが発生しやすい場所の掃除や消毒を徹底するほか、浴室や台所、洗面所などに腐った木があれば除去し、換気をして屋内の風通しをよくしましょう。
日常生活に支障がないような軽症であれば、住居の掃除の徹底など、環境を改善することで回復する可能性があるため、とくに治療をせずに経過を観察する場合があります。症状が重い場合は、ステロイド薬や酸素吸入などによる治療が行われます。カビの生え方など住居の状態によっては、転居がすすめられることもあります。