腎臓と尿路の病気
尿路結石とは
にょうろけっせきとは
Urolithiasis
初診に適した診療科目:泌尿器科
分類:腎臓と尿路の病気 > 尿路結石症
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どんな病気か
尿の通り道である腎杯・腎盂・尿管・膀胱・尿道をまとめて尿路といいます(図11)。この尿路にできた結石が、尿路結石です。
腎盂・腎杯で形成された結石が尿管に下降し、尿の通過障害を来した場合、疝痛発作といわれる七転八倒するほどの激しい痛みや血尿が起こりますが、これが尿路結石の典型的症状です。激しい腰背部痛・側腹部痛・下腹部痛のほかに、吐き気や嘔吐を伴うこともあります。しかし、結石が腎盂や腎杯にある場合には軽い鈍痛程度です。
尿路結石は30〜60代の男性に多く(男女比約2・5対1)、上部尿路(腎杯・腎盂・尿管)にできるものと、下部尿路(膀胱・尿道)にできるものに分けられます。近年の調査では、約95%が上部尿路結石です。
約90%以上はカルシウムを含むカルシウム結石で、X線検査で白い影として写ります。代表的な結石は、シュウ酸カルシウムで、リン酸カルシウム、またはその複合結石が大多数を占め、そのほか尿酸結石、リン酸マグネシウムアンモニウム結石、シスチン結石などがあります。
尿路結石は近年増加傾向にあり、日本人が生涯のうちに結石に罹患する確率は約10%、つまり10人に1人は結石にかかると報告されています。
症状がある場合の約70%は自然排石し、30%は手術を必要とします。結石は8㎜以下、とくに5㎜以下は自然排石の可能性があり、全体では尿路結石の約60%は自然排石するといわれています。
原因は何か
尿路結石の成因は多岐にわたります(表20)。
①尿路の通過障害
尿路に何らかの通過障害がある場合には結石ができやすくなります。たとえば、①先天的に腎盂と尿管の移行部が狭い腎盂尿管移行部狭窄、②腎盂・尿管がん、③尿管結石により、その部位の尿管に狭窄が生じた場合、④長期臥床による尿流停滞、⑤そのほか馬蹄鉄腎、海綿腎、尿管瘤、前立腺肥大症などがあげられます。
②尿路感染
尿路感染は、結石を形成させる要因のひとつです。尿素分解菌によって尿素が分解されるとアンモニアが生成され、尿がアルカリ化されてリン酸マグネシウムアンモニウム結石などの感染結石が形成されます。通常、結石形成抑制のために尿をアルカリ化しますが、アルカリ化しすぎても結石は形成されてしまいます。
③水分摂取
日常生活に関連して、とくに重要なものは水分摂取と食事です。
水を多く飲むことが、結石形成の予防になることはよく知られています。尿量を多くすることで、尿中にいろいろな物質が析出しないで溶けやすい状態になります。また、尿流が多くなることで、結石になる前の結晶の段階で流れるようにもなります。
水分摂取をする場合は、カルシウム、ナトリウム、シュウ酸が少なく、マグネシウムが多い水質が好まれます。糖質を含む清涼飲料水、甘味飲料水、コーヒー、紅茶、アルコールの過剰摂取は避けたほうがよく、一般家庭の水道水や麦茶、ほうじ茶がよいといわれています。尿量を2000ml/日以上にすることが推奨されています(心不全などの心疾患がある人などはその限りではない)。
④食事
食事に関しては、偏食・過食にならないようにして、バランスのとれた食事をすることが大切です。動物性蛋白と脂肪の摂取は、結石形成を促進する要因になります。これらは、尿中カルシウムを増加させ、クエン酸を低下させます。
結石の成分のなかで、シュウ酸は最も重要な物質のひとつです。シュウ酸を多く含む食品は、ホウレンソウ、チョコレート、ナッツ類、タケノコ、紅茶などで、これらを過度に摂取すると高シュウ酸尿症となります。これにカルシウムが結合して、シュウ酸カルシウム結石が形成されます。大部分はこのような外因性(外界からもたらされる)高シュウ酸尿症ですが、このほかに内因性(体内でつくられる)高シュウ酸尿症があり、その原因としてはビタミンCの大量摂取がいわれています。
カルシウムは適度(600〜800㎎/日)に摂取することが望ましいとされています。カルシウムを同時に摂取すると腸管内でカルシウムとシュウ酸が結合し、大きな物質になるためこの結合体の腸管からの吸収が抑えられ、便中に排出されます。そのため、カルシウム摂取が過少になると結石形成が促進されます。しかし、過度に摂取しても結石形成の促進につながります。
カルシウムは市販されている薬(サプリメント)ではなく、カルシウムを含んだ食品を適度に摂取することが肝要です。
高尿酸血症は痛風、痛風腎(尿酸が腎臓に沈着して機能低下するもの)の原因になるだけでなく、尿酸結石の原因になります。このため、プリン体を多く含む食事は、結石予防の観点からも望ましくありません。アルコール、とくにビールの過度の摂取は尿酸値を上昇させるだけでなく、結石形成を促進します。
⑤その他の病気と薬剤
血中カルシウム値が高値を示す病気として、原発性副甲状腺機能亢進症があります。これは副甲状腺腺腫からの副甲状腺ホルモンの分泌が盛んになり、血中カルシウム値が高値を示す病気です。再発性で多数の結石ができる場合は、血清カルシウム、リンのほかに副甲状腺ホルモンを測定することが必要です。
ステロイドホルモンは骨吸収を増加させ、骨形成を抑制することにより血中にカルシウムとリンを遊出し、結果的にカルシウムとリンは尿中に過剰に排泄され、結石が形成されます。ステロイドホルモンは骨以外にも腎臓、腸管、副甲状腺にも作用します。
クッシング症候群は、副腎腺腫からステロイドホルモンであるコルチゾールを過剰分泌する病気で、ステロイド薬の長期投与の患者さんと同様な病態を示します。治療として腺腫の摘出を行いますが、結石を合併する率は5〜50%といわれ、結石の治療も必要になります。
そのほか、緑内障の治療薬である炭酸脱水素酵素阻害薬(アセタゾラミド)は尿を強アルカリにし、尿中のカルシウム・リンが増加して結石ができやすくなります。このような患者さんでは、多量の水分摂取により眼圧上昇が懸念されるため、治療に難渋することがあります。
症状・検査・診断・治療
全般的には、突然の腰背部・側腹部・下腹部の激痛、さらに鼠径部・外陰部への放散痛、血尿、吐き気・嘔吐(腹腔神経節が腎臓と胃の両方を支配しているため併発する)が現れた場合には、尿路結石を念頭において精密検査をする必要があります。
区別すべき重要な病気として、急性腹症といわれる消化器疾患群があります。これらは、急性虫垂炎・急性憩室炎・急性膵炎・急性胆嚢炎などによる急性腹膜炎、胃十二指腸潰瘍穿孔、子宮外妊娠などです。急性腹症は致命的になることがあり、また緊急手術を要することもあるため、外科・消化器内科・婦人科などの連携が必要です。
このような病気の腹部所見として筋性防御(腹部を押すと硬く触れる)が著明ですが、尿路結石の場合にはそれほどでもなく、むしろ腎部(肋骨脊柱角)の叩打痛(叩いた時の痛み)が著明です。
病気に気づいたらどうする
前述のような典型的な症状が生じた場合には、泌尿器科への受診をすすめます。
まず、妊娠の有無、アレルギーの有無などを確認して、疼痛管理を行います。それと同時に身体的所見、尿検査、血液検査、腹部超音波、腎尿管膀胱部単純X線検査(KUB)を行います。CT検査(単純CTでよい)を施行することもあります。