腎臓と尿路の病気

腎臓結石

じんぞうけっせき
Nephrolithiasis

分類:腎臓と尿路の病気 > 尿路結石症

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どんな病気か

 結石は、多くは腎臓で形成されます。腎盂・腎杯内に結石がある場合は自覚症状に乏しいことが多く、検診で尿潜血を指摘され、精密検査で初めて発見されることもあります。

 腎杯頸部はやや狭いため、結石が形成されやすく、また形成された結石が通過しにくいため、腎杯が拡張して軽度の鈍痛が起こることがあります。腎盂尿管移行部も、尿管の生理的狭窄部位のひとつであるため、腎盂で結石が大きくなることがあります。

 腎盂の形に鋳型状の結石が形成されるサンゴ状結石は、腎結石の終末状態です。

検査と診断

 外来でまず行われる有用な検査は超音波検査です。腹臥位(腹ばい)または背臥位(あお向け)で腎臓を観察すると、腎盂・腎杯の位置にきらきらと白く見える高エコー像とアコースティックシャドウ(音響陰影)として写ります。

 結石が腎盂に嵌頓(はまりこむ状態)した場合には、腎盂・腎杯が拡張する水腎症を呈します。この場合には腎部の疼痛が起こります。

 腎盂・腎杯全体に結石が形成されたサンゴ状結石は、腎尿管膀胱部単純X線検査(KUB)でも腎盂・腎杯の形態がわかるような結石形態を示します。

 ヨード系造影剤にアレルギーを起こす人がいるので、最近は静脈性腎盂造影が行われることは少なくなり、代わりにCT検査が行われるようになりました。CTでは結石の3次元的な位置関係を把握することができます。また、X線陰性結石(X線では写らない)の尿酸結石やシスチン結石に対してもCTは有用です。

治療の方法

 結石の治療は、①鎮痛などの対症療法、②自然排石を促す待機療法、③尿酸結石やシスチン結石に対する溶解療法、④外科的治療法に分けられます。結石の形態にもよりますが、約8㎜以下、とくに5㎜以下の結石は自然排石が可能といわれています。

①対症療法

 疼痛がある場合には、鎮痛薬(インドメタシン坐薬やペンタゾシンの注射)、鎮けい薬を使用しながら、結石形成抑制薬などを投与します。

②待機療法

 水分摂取は最も重要な治療になりますが、吐き気・嘔吐が強い場合や脱水傾向がある場合には補液を行います。

 適度な運動(縄跳びなど)も有用です。

 尿路感染症を伴っている場合には起炎菌(原因となる菌)を特定し、抗菌薬の投与を行います。

③溶解療法

 一部が自然排石されて、結石分析により尿酸結石であると判明した場合には、キサンチンオキシダーゼ阻害薬であるアロプリノール(ザイロリック)と尿アルカリ化を図る目的でクエン酸製剤を投与します。

 シスチン結石の場合には、シスチンの溶解性を高めるために、ペニシラミン(メタルカプターゼ)などの投与と尿アルカリ化、尿量増加を図ることで、効果が得られます。

④外科的治療法

 自然排石が期待できない大きい結石に関しては、体外衝撃波砕石術(ESWL、コラム)を行います。サンゴ状結石の場合などは経皮的腎砕石術(PNL、コラム)などの内視鏡手術が行われます。腎切石術・腎盂切石術などの開放手術はほとんど行われなくなりましたが、最終的に腎摘出術を行う場合はあります。

 尿管結石が嵌頓(尿管にはまって完全閉塞を起こす状態)して腎盂腎炎を併発した場合には、抗菌薬の投与を十分行います。しかし、結石嵌頓が改善せず、解熱しない場合には、尿管にステントというシリコン性の細いチューブを挿入・留置し、尿路閉塞を解除する必要があります。

 結石嵌頓が強い場合には、尿管ステント挿入が困難な場合もあります。このような場合には、経皮的腎瘻(皮膚から腎盂までにバイパスのチューブを挿入する)を造設することもあります。いずれにしても腎孟腎炎を併発しているため、この処置は菌血症を引き起こしてしまう可能性もあり、慎重な対応が必要です。

 結石は再発を起こしやすい病気であるため、破砕・排石後も定期的なチェックが必要です。

(順天堂大学医学部附属練馬病院泌尿器科先任准教授・科長 坂本善郎)

内視鏡的操作による尿路結石除去術

 経皮的腎瘻造設後に経皮的に内視鏡(腎盂鏡)を挿入して腎盂内の結石を観察しながら破砕する経皮的腎砕石術(PNL)と、尿道・尿管に内視鏡(尿管鏡)を挿入して尿管結石を破砕する経尿道的尿管砕石術(TUL)があります。

 体外衝撃波砕石術(ESWL)に先駆けてPNLが施行されていましたが、ESWLの普及によってPNLは限定された治療法になりました。しかし、ESWLも限界があるため、大きな結石に関しては依然としてPNLは有用です。

 中部尿管以下の結石で一般によく行われるTULは、腰椎麻酔または硬膜外麻酔下に砕石位(両足を開いて軽く上にあげた体位)で行います。

 膀胱鏡を挿入し、尿管口から尿管・腎盂までガイドワイヤーを挿入し、膀胱鏡を抜いてから、尿道から尿管鏡をガイドワイヤーに沿って尿管内に挿入します。熟練していればガイドワイヤーは必ずしも必須ではありませんが、目安になるので安全な方法です。

 尿管口が狭い場合には、尿管バルーンダイレーターで拡張してから尿管鏡を尿管内に挿入します。

 尿管鏡は通常、硬性尿管鏡を使用しますが、結石が衝撃などで腎盂内にもどってしまった場合には、軟性尿管鏡を使用して砕石するか、尿管ステントを留置してESWLに切り替える必要があります。

 内視鏡下およびX線透視下で、尿管鏡を進めて結石まで到達させます。次に、結石を観察しながら砕石装置で砕石します。砕石装置は大きく分けて、超音波、レーザー、圧搾空気電気衝撃(小型のドリルのようなもの)、電気水圧衝撃の4種類があります。排石可能な大きさになるまで砕石して、尿管ステントを留置して手術は終了です。

 PNLは、硬膜外麻酔または全身麻酔下に腹臥位(腹ばい)で行います。まず、超音波ガイド下およびX線透視下で腎杯を穿刺し、腎瘻を造設します。サンゴ状結石や大きな腎結石の場合には腎瘻を造設するスペースがあまりなく、困難な場合もあります。腎瘻が造設されたあとは、腎盂鏡が挿入できるまで腎瘻を拡張して腎盂鏡を挿入します。

 TULと同様に、内視鏡観察下に砕石装置で破砕します。大きな結石の場合には、結石を直接体外につまみ出すこともあります。砕石後は腎瘻を留置して手術は終了です。

(順天堂大学医学部附属練馬病院泌尿器科先任准教授・科長 坂本善郎)

体外衝撃波砕石術(ESWL)

 ESWLは、上部尿路結石治療の中心を占めています。近年では第3世代の砕石装置が登場し、機器も進歩しています。衝撃波発生装置は水中放電方式、電圧方式、電磁波変換方式に大別されます。衝撃波の伝播方式には、患者さんの体を水槽内に入れる湿式と、水槽を使用しない乾式があります。

 結石に照準を合わせる方法には、X線透視または超音波を用います。X線透視照準法は、X線非透過性結石(通常のカルシウム含有結石)に対しては結石に照準を簡単に合わせられますが、尿酸結石、シスチン結石などのX線透過結石や腸管ガスが多い場合には照準が合わせられません。超音波照準法はX線被曝がない点はよいのですが、尿管結石の場合に照準が合わせにくい欠点があります。

 麻酔は、初期には全身麻酔を行っていましたが、硬膜外麻酔や局所麻酔、鎮痛薬(ペンタゾシンなど)を用いても治療できるようになり、入院日数も短縮できるようになりました。一般には、経過観察を含めて数日の入院をしますが、1泊または日帰り手術も可能になりました。

 治療するうえでの問題点として、破砕された結石の小片が尿管内に詰まるストーン・ストリートや、血尿、腎周囲・腎被膜下血腫などがあります。このため、抗凝固薬投与時など出血しやすい状態でのESWLは好ましくありません。

 また、結石の近くに動脈瘤(腹部大動脈瘤、腎動脈瘤)がある場合は、症例によっては施行できないこともあります。骨盤腎(腎臓の位置異常で、骨盤内にあるもの)や小児ではあまり推奨されていません。

(順天堂大学医学部附属練馬病院泌尿器科先任准教授・科長 坂本善郎)