朝なかなか起きられない─思春期に多い「起立性調節障害」

朝なかなか起きられない─思春期に多い「起立性調節障害」

朝なかなか起きられない─思春期に多い「起立性調節障害」

2019.04.22

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小学校高学年から中学生くらいで、「朝なかなか起きられない」「夜は元気なのに、午前中は体調がよくない」といった症状がある場合、起立性調節障害(OD)の可能性があります。

「怠けている」と誤解されやすい病気

起立性調節障害は、小学校高学年から中学生くらい、年齢では10~16歳ごろ多くみられます。軽症例を含めると、小学生の約5%、中学生の約10%が発症するといわれています。

主な症状は、朝なかなか起きられない、立ちくらみ・めまい・動悸(どうき)がある、午前中に気分や体調が悪い、などのほか、頭痛や腹痛がある、疲れやすい、乗り物に酔いやすい、顔色が悪い、などです。

これらの症状のうち複数に当てはまる場合は、起立性調節障害が疑われます。起立性調節障害による不調は午前中に強くあらわれ、午後には軽くなる傾向があります。夜は元気なのに、朝になるとだるくて起きられないことから、「怠けている」「さぼっている」との誤解を受けやすいようです。

起立性調節障害は自律神経の乱れによって起こる

起立性調節障害の主な原因は、自律神経の働きの乱れから血圧の調節がうまくできないためと考えられています。

私たちの血圧は、自律神経によってコントロールされています。横になった状態から立ち上がると、体内の血液は重力に引かれて下半身にたまりやすくなり、血圧が下がります。健康な人では自律神経の働きによって下半身の血管が収縮し、血液を上半身へ送り返すため、いったんは血圧が下がってもすぐに元に戻ります。

ところが、起立性調節障害の人はこうした自律神経の働きがうまく機能しないため、血圧の調整が進まず、さまざまな不調があらわれてしまうのです。起立性調節障害には、血圧が下がってなかなか戻らないタイプや、脈拍が異常に速くなるタイプ、失神を起こすタイプなどがあります。

病気について正しく理解して、立ち上がり方などを工夫し、生活リズムを整える

起立性調節障害の診断には新起立試験という方法が用いられ、横になったときと立ち上がったときとで、血圧と脈拍がどう変化するかを調べます。

治療を始める際にまず大事なことは、本人や家族、周囲の人などが、起立性調節障害について正しい知識をもつことです。起立性調節障害の場合、朝起きられないのは単なる怠けグセなどではなく、病気の症状であることを理解しましょう。

そして、次のような日常生活での指導が行われます。

  • 座ったり寝たりした姿勢から立ち上がるときは、頭を下げてゆっくり立つ
  • 立っているときは、脚をクロスする
  • 1日に1.5~2リットルの水分をとる
  • 毎日30分くらいのウオーキングを行い、早めに就寝して生活リズムを整える

これらで改善しない場合は、薬物療法や必要に応じて心理療法なども行われます。

重症の起立性調節障害では、長期に及ぶ不登校や引きこもりの原因となることもあります。思春期の子どもに、「なかなか起きられない」などの「午前中の不調」がみられた場合は、一度、医療機関に相談するとよいでしょう。

(家庭の医学大全科ウェブサイト 編集部)