軽くみないで!実は怖いおたふく風邪─子どもが聴力を失う危険も

軽くみないで!実は怖いおたふく風邪─子どもが聴力を失う危険も

軽くみないで!実は怖いおたふく風邪─子どもが聴力を失う危険も

2019.04.08

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「おたふく風邪」は、子どもに多くみられる感染症ですが、大人がかかることもあります。ありふれた病気のひとつとして軽視されがちですが、ムンプス難聴などの深刻な合併症や後遺症を引き起こすケースもあります。病気についてよく知っておき、正しく対処することが大切です。

ウイルスの感染に気づかず、周囲にうつしてしまうことも

「おたふく風邪」はムンプスウイルスの感染によって起こり、正式には「流行性耳下腺炎(じかせんえん)」といいます。ウイルス感染から平均18日前後の潜伏期間を経て、突然の発熱で始まり、続いて両側あるいは片側の耳の下あたり(耳下腺)が腫れて、痛みを伴うのが特徴です。腫れはあごの下あたりにも広がることがあります。

ムンプスウイルスの主な感染経路は、飛沫感染と接触感染です。気をつけなければならないのは、症状があらわれる6日ほど前から、患者の唾液中にはすでにウイルスが排出されていること。また、感染しても症状があらわれない人が30~35%ほどいるといわれているため、気づかぬうちに周囲の人にうつしてしまう危険があるので要注意です。

高度な難聴が残る「ムンプス難聴」の恐れも

現在、おたふく風邪に対する有効な治療薬はありません。医療機関での治療は対症療法が一般的で、通常は7~10日で回復します。一方で、深刻な合併症や後遺症の危険もあります。

なかでも深刻なのは、「ムンプス難聴」です。治療による聴力の回復が期待できず、後遺症として約80%に高度な難聴が残るといわれています。ほとんどが片耳に起こりますが、両耳に起こることもあります。ムンプス難聴が最も多くみられるのは学童期の子どもで、とくに低学年で多くなっています。最近の調査では、おたふく風邪にかかった子どもの約1,000人に1人がムンプス難聴を発症しているとされ、子どもが聴力を失う主要な原因になっています。

注意が必要な合併症は、ほかにもあります。思春期以降の男性に多くみられるのが「精巣炎」であり、男性の約20~40%に起こるとされています。症状は睾丸(こうがん)の腫れや圧痛、嘔吐、発熱などで、患者の約半数で睾丸に部分的な萎縮がみられますが、不妊の原因となることはまれです。女性では約5%に「卵巣炎」が起こることがあり、腹痛などの症状がみられますが、不妊の原因となることはないといわれています。

そのほかにも、「無菌性髄膜炎(ずいまくえん)」や「脳炎」、「膵炎」、腎機能の低下などの合併症がみられることがあります。

おたふく風邪の予防には計2回のワクチン接種が有効

おたふく風邪は、ワクチン接種により予防することが可能です。多くの先進国で定期接種になっていますが、日本では任意接種です(2019年4月現在)。ムンプスウイルスには特効薬がないこと、また、ムンプス難聴のような深刻な合併症のリスクがあることなどを考慮して、ワクチン接種を検討することがすすめられます。

日本小児科学会では、より高い予防効果を得るために、1歳と小学校入学前(5~6歳)にそれぞれ1回、計2回のワクチン接種を推奨しています。

(家庭の医学大全科ウェブサイト 編集部)