伝染性紅斑(リンゴ病)が流行期に─初感染妊婦は流産の危険も!
伝染性紅斑(リンゴ病)が流行期に─初感染妊婦は流産の危険も!
2019.03.04広告
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「伝染性紅斑(でんせんせいこうはん)」は、「リンゴ病」とも呼ばれ、子どもに多い病気として知られています。しかし、妊娠中の女性が初感染すると、胎児に障害が起こったり、流産・死産のリスクが高まったりします。伝染性紅斑は、春から夏にかけて患者数が増加する傾向があるため、妊娠中の人はとくに警戒が必要です。
伝染性紅斑は4~5年周期で流行がみられる
伝染性紅斑は、ヒトパルボウイルスB19(PVB19)への感染によって起こります。両ほおにチョウが羽を広げたような赤い発疹があらわれるのが特徴で、ほおがリンゴのように赤くなることから、リンゴ病と呼ばれるようになりました。
例年、春から夏にかけてと年末に、伝染性紅斑の患者数増加がみられます。また、4~5年周期で大きな流行が起きており、直近では、2011年と2015年に全国的な流行がありました。2019年も2月下旬現在で、直近2回の流行時を上回る勢いの患者数の増加が報告されており、伝染性紅斑への警戒と予防対策が呼びかけられています。
成人は特徴的な症状があまり出ず、気づかれにくい
伝染性紅斑は10歳未満の子どもに多くみられる病気で、なかでも5~9歳ごろに最も多く発症がみられます。また、子どものころにかかったことがないと、成人でも発症します。
子どもがPVB19に感染した場合、通常は10~20日の潜伏期を経て、両ほおに真っ赤な発疹があらわれます。続いて手足や体に網目状の赤い発疹があらわれ、1週間程度で自然に消えていきます。発疹があらわれる7~10日前に微熱や風邪のような症状がみられることが多いのですが、ウイルスの排出が最も多く感染力が高いのはこの時期です。発疹があらわれるころには、感染力はほぼ消失しているとされます。
成人では特徴的なほおの発疹があらわれることが少なく、症状も手足の発疹や全身倦怠感、関節の腫れや痛みだけの場合があります。伝染性紅斑の流行期は風疹の流行期とも重なるため、成人では風疹と診断されているケースも多いのではないかと推察されています。また、症状があらわれない不顕性感染も、とくに成人で多くみられています。
妊婦は風邪症状のある人との接触を極力避けて
伝染性紅斑でとくに注意しなければならないのが、妊婦への初感染です。妊娠中に初めて感染した場合、約20%の割合でウイルスが胎盤を通過して胎児に感染し、さらにそのなかの約20%に胎児の貧血や胎児水腫(胎児のむくみ)が起こる恐れがあります。とくに妊娠早期の感染ほど危険とされ、流産や死産のリスクが高まることもわかっています。
日本人の妊婦のうち、PBV19への抗体(免疫)を持っている人は推計で20~50%といわれ、半数以上の妊婦は感染の可能性があるとみられています。
今のところ、PVB19の感染を予防するワクチンはなく、母子感染を防ぐ方法も確立されていません。PVB19の主な感染経路は、インフルエンザと同じ飛沫感染や接触感染なので、手洗いやうがいをこまめに行い、マスクを着用することを心がけましょう。また、伝染性紅斑の流行時期には、妊婦は患者や風邪症状のある人との接触をできるだけ避けることが肝心です。小さな子どもがいる家庭や、子どもと接する機会が多い職場なども注意が必要です。
万一、妊婦がPVB19に感染してしまった場合は、主治医のもとで慎重に胎児の状態を観察していくことになります。