「心房細動」は重症脳梗塞を引き起こす恐れも
「心房細動」は重症脳梗塞を引き起こす恐れも
2019.03.19広告
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「心房細動」は不整脈の一種で、心臓の心房という部分が細かく震えて、異常な速さの拍動となります。60歳を過ぎると発症しやすくなるといわれ、高齢者の増加に伴って患者数が増え続けています。心房細動は無症状のことが多いのですが、気づかずに放置していると、脳梗塞や心不全の引き金になる危険があります。
血液がよどみ、血栓ができやすくなる
心臓の内部は4つの部屋に分かれています。そのうち、心臓の上部にあるのが「左心房」と「右心房」、下部にあるのが「左心室」と「右心室」です。心臓の拍動はその中を流れる電気信号によって調節されており、心房や心室が協調しながらポンプのように収縮・拡張することで、血液を全身に送り出しています。この電気信号は、右心房の中(右心房と上大静脈とのつなぎ目付近)にある洞結節から出ています。
心房細動は、異常な電気信号の発生によって、心房が1分間に約400~600回もの速さで細かく震える不整脈の一種です。動悸やめまい、胸部の不快感、脈の乱れなどの症状が現れる場合もありますが、多くの場合は無症状だといわれています。心房細動に気づかずに放置していると、徐々に心臓のポンプ機能が低下し、全身の血液の流れが悪くなって息苦しさなどが現れる心不全に陥る恐れがあります。
万一、胸の違和感や脈の乱れなどに気づいたら、早めに循環器内科などを受診しましょう。
「心原性脳塞栓」は最も重症化しやすい
また、心房細動が起こると、心臓は正常に収縮・拡張ができなくなります。すると、心房内で血液の流れがよどみ、血栓(血の塊)ができやすくなります。この血栓が血液の流れに乗って運ばれ、脳の血管に詰まって脳梗塞を引き起こすことがあります。これを「心原性脳塞栓」といいます。
脳梗塞とは、何らかの原因で脳の血管が詰まって血液の流れが滞り、その先の組織が死んでしまう病気です。脳梗塞にはいくつかのタイプがありますが、心原性脳塞栓は最も重症化しやすいとされています。心臓の中でできた大きな血栓が脳の太い血管を塞いでしまうため、血流が途絶える範囲が広くなりやすいからです。心原性脳塞栓の原因の約9割は、心房細動によるものとみられています。
生活習慣を見直し、持病があれば適切な治療を
心房細動の原因ははっきりわかっていませんが、心臓の病気や肥満、心身のストレス、大量飲酒、肥満などが関わっていると考えられています。また、高血圧や糖尿病、肺や甲状腺の病気なども心房細動のリスクとされます。そのため、予防のためにはこれらの病気に対する適切な治療を受けるとともに、生活習慣を改善することも大切になります。
心房細動の主な治療法としては、薬物療法やカテーテル治療などがあります。薬物療法では、心房細動を起こりにくくする抗不整脈薬や脈拍数を抑える薬、血液を固まりにくくする抗凝固薬などが使われます。
薬物療法の効果が不十分な場合は、カテーテル・アブレーションという手術が検討されることもあります。先端に器具がついたカテーテルという細い管を脚の付け根の静脈から挿入し、それを心臓まで通して、心房細動のもとになっている異常な電気信号を遮断する処置を行います。
どの治療法が適しているかは患者ごとに違うため、心房細動の重症度や症状の強さ、持病の有無なども含めて、担当医と十分に相談して選択することになります。