腎臓と尿路の病気
特発性腎出血
とくはつせいじんしゅっけつ
Idiopathic renal hemorrhage
初診に適した診療科目:泌尿器科
分類:腎臓と尿路の病気 > 腎臓の病気
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どんな病気か
特発性腎出血とは、腎臓から尿路への原因不明の出血です。肉眼的血尿(真っ赤な尿)が数時間〜数日続きます。腎臓からの出血といっても、体内に血液がたまるわけではありません。20〜30代の比較的若年者に多くみられます。
ちなみに「特発性」は「原因不明」という意味です。「突発性」という似たような単語がありますが、こちらは「突然に」という意味です。
なお、ナットクラッカー現象(コラム)による腎出血は、以前は特発性腎出血に含まれていましたが、原因が明らかになったので、現在では含まれません。
症状の現れ方
原因や誘因がなく、いきなり真っ赤な尿が現れるため、びっくりしてしまうことが多いようです。一度だけの場合もありますが数日間続くこともあります。また、再発することもあります。多くの場合、泌尿器科を受診することになります。
真っ赤な尿のすべてが特発性腎出血ではありません。他の原因としては、尿路感染症(膀胱炎など)、尿路結石症(尿管結石など)、尿路悪性腫瘍(膀胱がんなど)、糸球体腎炎(急性糸球体腎炎やIgA腎症など)、尿路異物などがあげられます。
検査と診断
他の原因による肉眼的血尿を除外することが必要です。具体的な検査としては、尿沈渣、尿細胞診、尿細菌培養、超音波、CT、MRI、静脈性腎盂造影(IVP)、膀胱鏡などを行います。他の原因を除外することにより、特発性腎出血と診断できます。
治療の方法
薬物療法としては、抗プラスミン薬などの止血薬が使用されています。肉眼的血尿が持続する場合には、尿管カテーテルを用いて硝酸銀の腎盂内への注入も行われます。
病気に気づいたらどうする
他の疾患が除外できたら、あわてる必要はありません。多くは自然に消失します。持続したり、何度も再発したりする場合には、泌尿器科を受診して治療を行います。肉眼的血尿が見られる間は、飲酒や激しい運動はひかえたほうがよいでしょう。
関連項目
急性糸球体腎炎、慢性糸球体腎炎、腎がん、尿路結石症、急性膀胱炎、膀胱がん
ナットクラッカー現象
左の腎静脈が、腹部大動脈と上腸間膜動脈という2つの血管でできたV字の部分を通過するために強くはさまれてしまい、腎静脈内の血液がうっ滞を起こして、腎臓内に出血するものです(図8)。その部分に、クッションとしての脂肪組織が少ない場合に起こりやすいといわれています。
症状としては、肉眼的血尿がみられます。超音波、CT、MRIや三次元画像が得られるヘリカルCTなどの検査が有用です。ちなみにナットクラッカーとは「クルミ割り器」のことです。左の腎静脈が、ちょうどクルミのように2つの動脈に挟まれていることから、この名前がついています。解剖学的な特性から右側には生じません。