風疹流行の中心は30~40代男性─妊婦は厳重な警戒を!

風疹流行の中心は30~40代男性─妊婦は厳重な警戒を!

風疹流行の中心は30~40代男性─妊婦は厳重な警戒を!

2019.01.21

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2018年7月下旬以降、風疹患者の増加が止まりません。全国的に大流行した2013年以来の勢い、ともいわれています。風疹は妊婦が感染すると胎児に障害をもたらす恐れがあります。配偶者や職場の同僚など、妊婦の近くにいることが多い世代である成人男性を中心に風疹の流行が広がっているため、とくに注意が呼びかけられています。

30~50代の男性は予防接種歴がなく、風疹にかかりやすい

風疹は風疹ウイルスによって起こる急性感染症で、感染後2~3週間の潜伏期間を経て発症します。主な症状は発熱とともに顔や全身にあらわれる小さな赤い発疹で、そのほかにも、耳や首の後ろのリンパ節の腫れ、目の充血、咳などがみられます。ただし、感染しても症状があらわれない人(不顕性感染)も、15~30%ほどいるといわれています。

風疹ウイルスに対する特効薬はないため、治療は解熱薬などによる対症療法になります。通常は数日で治りますが、まれに急性脳炎や血小板減少性紫斑病といった、重い合併症を引き起こす場合があります。

風疹は子どもの病気という印象が強いかもしれませんが、近年の流行の特徴は患者の多くが成人であることです。2018年12月の報告では患者の9割以上が成人で、男性患者の数は女性の約4倍です。また、男性全体の8割以上を30歳以上の人が占めており、今回の風疹流行の中心となっています。

風疹はワクチンの接種で予防できますが、今回の流行の中心である30~50代の男性は、過去に定期予防接種を受ける機会がありませんでした。また、幼少期に風疹にかかっていない人も多く、免疫を持っていない人が多いため、風疹にかかりやすいとみられています。

妊娠初期に感染すると、胎児に障害の危険も

風疹で最も注意すべきなのが、妊婦への感染です。主に妊娠初期(20週ごろまで)の妊婦が風疹ウイルスに感染すると、胎児にも感染して、生まれてくる赤ちゃんに障害が起こる恐れがあります。これを先天性風疹症候群といい、難聴、心疾患、眼の病気(白内障、緑内障、網膜症など)、低出生体重、精神・運動発達の遅れ、血小板減少性紫斑病、肝脾腫(かんひしゅ)、肝炎などがあらわれ、命に関わる危険もあります。

一方、風疹の主な感染経路は飛沫感染で、患者のくしゃみや咳、会話などで飛び散るしぶきに含まれるウイルスによって広がります。症状があらわれる1週間前から感染力があるうえ、症状が出ない不顕性感染でも感染力はあるため、完全に感染を防ぐことは困難です。

そのため、先天性風疹症候群を防ぐには、女性は妊娠前に風疹のワクチン接種を受けておくこと(接種後は2カ月間妊娠を避ける)、妊婦の周囲の人もワクチン接種を受けることが重要です。妊娠中はワクチン接種を受けることができません。すでに妊娠している場合は速やかに風疹の抗体検査を受け、妊娠初期(妊娠20週まで)で免疫がない妊婦は、不要不急の外出や出勤を控えるなどして、厳重に予防に努めてください。

妊婦の周囲の配偶者や同居の家族、職場の人たちなどで、風疹の罹患歴や予防接種歴のない人がいたら、ただちに免疫の有無を確認して、ワクチンの接種を受けるようにすることが妊婦への感染予防になります。

該当世代で風疹の抗体を持たない男性に、定期接種の実施が決定

現在、妊娠を希望する女性や妊婦、その夫やパートナー、同居者などを対象として、風疹抗体検査やワクチン接種の費用助成を行っている自治体が多くあります。対象者の範囲や助成費用などは自治体ごとに異なりますので、お住まいの自治体の保健担当部署などに問い合わせて積極的に利用するとよいでしょう。

また、厚生労働省は2018年12月の審議会において、風疹感染の拡大防止のための追加対策として、期間を定めて風疹の定期接種の対象を拡大することを決めました。主な内容は、1962年(昭和37年)4月2日から1979年(昭和54年)4月1日までに生まれた男性を対象として、風疹の抗体検査を行ったうえで免疫がない男性に定期接種を実施するもので、実施期間は2019年から2021年度末の約3年間となっています。対象者の範囲などは、必要に応じて見直されるということです(2018年12月現在)。

(家庭の医学大全科ウェブサイト 編集部)