ヒートショックが原因!?交通事故死より多い冬の「入浴死」

ヒートショックが原因!?交通事故死より多い冬の「入浴死」

ヒートショックが原因!?交通事故死より多い冬の「入浴死」

2018.12.27

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冬は、入浴中の死亡事故が多く発生する季節です。その主な原因となるのが、急激な温度変化が引き金となって起こる「ヒートショック」。自分は大丈夫!と油断せず、ヒートショック対策をしっかりと行いましょう。

入浴中の死亡者数は交通事故死を上回るとの推計も

欧米諸国と比べて、日本では入浴中に亡くなる人の数が大変多くなっています。その主な原因とされるのが、「ヒートショック」です。これは、急激な温度変化によって血圧が大きく上下する、などから起こる体調不良のことです。

厚生労働省の統計によると、2017年に家庭内の不慮の事故により浴槽で溺死した人の数は5,536人です*1。ただし、ここには心不全や心筋梗塞、脳卒中などの、溺死以外の死因で亡くなった人の数は含まれていません。実際にヒートショックに関連して入浴中に亡くなった人の数は、「家庭内での溺死」の3~4倍にのぼると考えられています。その数は、交通事故で亡くなった人の数(2017年は15,147人*1)を上回ると推計されます。

東京都健康長寿医療センター研究所の分析では、2011年に入浴中に亡くなった人の数を約17,000人と推計*2。これは「家庭内での溺死」として報告された4,581人*3の、約3.7倍の数になります。

*1 厚生労働省「平成29年(2017)人口動態統計」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei17/index.html

*2 東京都健康長寿医療センター「わが国における入浴中心肺停止状態(CPA)発生の実態―47都道府県の救急搬送事例9360件の分析―」(https://www.tmghig.jp/research/release/cms_upload/press_20140326_2.pdf

*3 厚生労働省「平成23年(2011)人口動態統計」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei11/

温度の変化による急激な血圧変動が、重篤な症状を引き起こす

入浴中の事故死は寒い時期に急増するのが特徴で、全体の約半数は12月から2月にかけて発生しています。その理由は、暖房がきいた部屋と、暖房をしていない脱衣所や浴室とで大きな温度差があることです。

寒い脱衣所で衣服を脱ぐと、体の表面の温度が一気に下がります。すると、寒さの刺激によって血管が収縮し、血圧が急上昇します。続いて温かいお湯につかると、今度は血管が拡張して血圧が急激に低下します。このような血圧の急激な上下は、失神や不整脈を引き起こしやすく、それによって入浴中に意識を失うと浴槽での溺死事故につながります。

死亡者の大多数を占めているのは、65歳以上の高齢者です。とくに持病がなく普段は元気な高齢者であっても、入浴中に事故が多発する傾向がみられます。また、ヒートショックによって、心不全や心筋梗塞、脳卒中などが引き起こされるリスクも高くなるといわれています。

ヒートショックを予防するために、住宅内の温度環境を整える

ヒートショックによる突然死を防ぐうえで重要なのは、住宅内の温度差をできるだけ小さくすること。たとえ外が寒くても、住宅内の温度環境が整っていれば、ヒートショックの発生を抑えることができるといわれています。

よい例となるのが北海道と沖縄県で、この2道県は他の都府県よりもヒートショック発生の割合が低くなっています。その理由は、寒い北海道は行き届いた暖房環境で、沖縄県は温暖な気候によって、どちらも住宅内の温度差が小さくなっているためと考えられています。

【ヒートショック予防のポイント】

(1)冷えやすい脱衣所は、電気ストーブやオイルヒーターなど、火を使わないタイプの暖房器具で暖めましょう。

(2)浴室は湯気で暖めるのが効果的。お湯をはった浴槽のふたの一部を開けておく、浴槽にお湯をはるときに、最後の3分間くらいは高い位置から熱め(45℃くらい)のシャワーでお湯を入れる、などの工夫で浴室全体を暖めることができます。

(3)浴槽のお湯の温度は、38~41℃を目安に。お湯の温度が高すぎると血圧上昇の引き金になるため、熱くしすぎないようにしましょう。浴槽に入る前には十分にかけ湯をして、体をお湯に慣らします。

(4)長湯は血圧低下の一因となるので、お湯につかるのは1回約5分間までに。浴槽から出るときに急に立ち上がると、立ちくらみやふらつきを起こしやすいので、浴槽のへりなどにつかまってゆっくり立ち上がってください。

(5)入浴の前後にコップ1杯の水を飲む、食事の直後や飲酒時の入浴は控える、といったことも心がけましょう。高齢者が入浴する際は、万一に備え、家族で見守る配慮も大切です。

(家庭の医学大全科ウェブサイト 編集部)