旅行シーズンの麻しん(はしか)感染に要注意

旅行シーズンの麻しん(はしか)感染に要注意

旅行シーズンの麻しん(はしか)感染に要注意

2018.08.01

広告

広告

日本では、2015年に麻しん(はしか)の排除状態にあることが認定されました。しかしその後も、海外から日本に持ち込まれたウイルスへの感染を機に、麻しん患者が発生しています。流行を拡大させないためにも、麻しんについて正しく理解しておきましょう。

重篤な合併症を起こし、命にかかわる危険も

麻しんは、麻しんウイルスによって引き起こされる感染症です。感染力が極めて強く、空気感染、飛沫感染、接触感染のいずれでも広がり、手洗いやマスクでは予防ができません。また、麻しんの免疫を持っていない人がウイルスに感染すると、ほぼ100%が発症するといわれています。

ウイルスに感染すると10~12日の潜伏期を経たのち、まず発熱やせき、鼻水、結膜炎症状などのかぜに似た症状があらわれます。発症から2~4日目には39℃以上の高熱とともに額や首のあたりから赤い発疹が出現し、全身に広がっていきます。また、発疹があらわれる1~2日前に、口内の粘膜にコプリック斑と呼ばれる白い小さな斑点ができるのも特徴です。

発疹があらわれてからさらに3~4日ほど発熱が続きますが、徐々に発疹が薄くなっていき、発症から7~10日くらいで回復します。

麻しんには有効な治療方法はないため、対症療法となります。ただし、肺炎や脳炎、中耳炎などの合併症を起こすことも多く、命にかかわる恐れもあります。また、妊娠中の人が麻疹にかかると一般的に重症化すること、さらに流産や死産、早産の危険が高まることがわかっているため、とくに注意が必要です。

アジアやヨーロッパではいまだ麻しんが流行している

日本では、2007~2008年に10~20代を中心に、麻しんの大きな流行がみられました。しかし、該当する年代に対して麻しんワクチン接種を受ける機会を設けたことなどにより、患者数は激減。そして、2015年には世界保健機関(WHO)により、日本は麻しんの排除状態にあると認定されました。

一方で、海外ではいまだ麻しんが流行している地域が多く、海外から日本に持ち込まれたウイルスによって国内で発症した麻しん患者が報告されています。近年では、2017年に発生したヨーロッパでの流行が今も続いており、アジア地域では常に流行している状態です。2018年春から続いている国内での麻しん患者の発生は、台湾から持ち込まれたウイルスが原因とみられています。

ワクチン接種が唯一の有効な予防法

麻しん予防に有効な唯一方法は、ワクチン接種とされています。現在、国内では麻疹・風疹混合ワクチン(MR)の定期接種(7歳までに2回接種)が行われています。免疫獲得率は1回接種で93~95%以上、2回接種で97~99%以上といわれています。

1990年4月1日以前に生まれた人には1回しか接種していない人が多く、麻しんへの免疫が不十分な人が含まれている世代です。これまで麻しんにかかったことのない人や、予防接種を2回受けていない人などは、早めにワクチン接種をすることがすすめられます。ただし女性の場合、妊娠中は接種を受けられず、また接種後は2カ月間の避妊が必要です。免疫があるかどうかは、医療機関での抗体検査で調べられます。

夏休みなどの長期休暇に海外旅行を計画している人も多いと思いますが、日本産婦人科医会は、妊娠している人やその家族が麻しん流行地へ出かけることを、極力避けるよう注意喚起を行っています。

(家庭の医学大全科ウェブサイト 編集部)