「盲腸」ってよく聞くけど、どんな病気?
「盲腸」ってよく聞くけど、どんな病気?
2023.02.03広告
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「盲腸」という言葉は聞いたことがあっても、病気の実態について正しく理解している人は意外と少ないかもしれません。治療が遅れると命にかかわる危険もあるため、たかが盲腸とあなどらず、正しい知識を身につけておきましょう。
細菌感染により発症
俗に「盲腸」と呼ばれている病気は、正しくは「急性虫垂(ちゅうすい)炎」といいます。盲腸は小腸との境目近くにある大腸の一部であり、盲腸の先端にある長さ7~8㎝の細長い臓器を虫垂といいます。急性虫垂炎は、この虫垂に化膿性の炎症がおこる病気です。
原因としては、食べ物の残りかすや化石化した大腸の内容物、虫垂粘膜の腫れなどにより虫垂の入り口がふさがれ、細菌に感染することで発症すると考えられています。
時間が経過するほど重篤な合併症をおこすリスクが高くなる
初期症状としては、食欲不振、上腹部やへそ周辺の軽い不快感や痛みなどがみられ、次いで軽い吐き気や嘔吐などの症状が現れます。その後、時間の経過とともに痛みは右下腹部へと移動し、37℃台の微熱が現れます。
さらに炎症が進行すると、虫垂に穴があいて周囲に膿が広がってしまう腹膜炎を併発する場合があります。また、虫垂から漏れ出た細菌が血流に乗って全身に広がると敗血症を引きおこす場合があり、これらを合併すると命に関わる危険があります。
症状が出始めてから24時間ほど経過すると、これらの合併症をおこすリスクが高くなるといわれているため、早期発見・早期治療が非常に重要です。
治療法は病状によって選択される
急性虫垂炎の診断は、血液検査のほか、腹部レントゲン検査、超音波検査、CT検査によって行われます。
治療法は大きく分けて、薬物療法と手術の2つがあります。炎症がそれほど進行していない場合は点滴や抗菌薬で炎症を抑え、炎症がある程度進行している場合は手術で虫垂を切除する、というように、病状によって治療法が選択されます。
最近の傾向としては、炎症が強い急性期には抗菌薬や膿瘍穿刺排膿(のうようせんしはいのう:針を刺してたまった膿を出すこと)などを併用した保存的治療を行い、炎症がある程度治まってから、後日手術を行う、というケースも多くなっています。また、かつては開腹手術が一般的でしたが、炎症がそれほどひどくなければ、内視鏡による手術も可能です。
なお、保存的治療でいったん炎症が治まったとしても、3人に1人くらいの割合で虫垂炎を再発することがわかっています。また、残念ながら現時点では有効な予防法は確立していません。
重篤な合併症を招かないためにも、虫垂炎が疑われる症状に気づいたら早めに受診し、早期発見に努めることが大切です。