消化管に潰瘍や炎症が起こる難病「クローン病」
消化管に潰瘍や炎症が起こる難病「クローン病」
2022.04.15広告
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クローン病は、小腸や大腸などの消化管に潰瘍(かいよう)や炎症が起こる原因不明の病気で、厚生労働省から難病に指定されています。完治まではいかなくても、症状が軽減した寛解(かんかい)の期間を長くする治療法は進歩しているため、上手に病気とつき合っていくことが大切です。
消化管のあらゆる部位で起こる
消化管とは、口から取り込んだ食物を消化・吸収し、最終的に便として排泄するまでの役割を担う器官をいいます。クローン病と同様に難病に指定されている潰瘍性大腸炎は、潰瘍ができる部位は大腸に限定されます。これに対し、クローン病は消化管のあらゆる部位で潰瘍や炎症が起こる可能性がある病気です。
クローン病は若年層で起こりやすく、発症のピークは男性で20歳代前半、女性で10歳代後半です。また、女性よりも男性に多くみられ、その比率は2対1とされています。
深い部分まで炎症がおよび、合併症が起こることも
クローン病の原因はまだはっきりとわかっていませんが、免疫機能の異常が関わっているとされています。本来は異物のみを排除する働きをする免疫細胞が過剰に働き、消化管そのものを攻撃することで潰瘍や炎症が起こると考えられています。
クローン病の代表的な症状は腹痛や下痢で、そのほか発熱、全身倦怠感、食欲不振、体重減少、貧血などが現れることがあります。
また、潰瘍性大腸炎では炎症が粘膜にとどまるのに対し、クローン病はさらに深い部分まで炎症がおよびます。そのため、腸の内腔が狭くなる狭窄(きょうさく)、腸の壁に穴があく穿孔(せんこう)、隣り合った腸がつながってトンネルができてしまう瘻孔(ろうこう)などの合併症が起こることがあります。
治療により寛解状態の継続を目指す
クローン病が疑われる場合は、血液検査や便検査、内視鏡検査、CT・MRI検査などを行って診断します。クローン病を完治させる治療法はまだないため、治療では消化管の炎症をなくし、寛解(かんかい:症状が落ち着いて安定した状態)をできるだけ継続させることを目指します。
まず、腸管を休ませつつ、栄養状態を改善させるため、栄養剤を投与する栄養療法を行います。投与方法としては、鼻から十二指腸までチューブを挿入する経腸栄養療法、胸などの静脈にカテーテルを挿入する中心静脈栄養療法があります。
薬物療法では、症状の程度に合わせた薬を用います。高度の狭窄や穿孔に対しては、手術を行う場合もあります。
日常生活では、食事に注意することが不可欠です。肉類、高脂肪の食品、アルコール類は控えめにしてください。また、症状が落ち着いていても、定期的に内視鏡検査などを受けるようにしましょう。