異常がないのに胃の不調が続く「機能性ディスペプシア」

異常がないのに胃の不調が続く「機能性ディスペプシア」

異常がないのに胃の不調が続く「機能性ディスペプシア」

2022.02.04

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機能性ディスペプシアは、胃に炎症や潰瘍などの異常がないにもかかわらず、胃痛や胃もたれなどの不快な症状が慢性的に生じる病気です。命に関わる病気ではないものの、生活の質の低下につながるため、早めに適切な対策をとることが大切です。

日本人の10人に1人が発症

機能性ディスペプシアは、2013年に保険診療の診断名として認可された病気です。かつては「ストレス性胃炎」「神経性胃炎」などと診断されていたものですが、実際には炎症が認められないことから、このような胃の不調を1つの病気としてとらえるようになりました。

日本における機能性ディスペプシアの患者は、健診受診者の11~17%に上り、男性よりも女性に多くみられます。

自律神経の乱れやストレスが原因に

通常、胃に食べ物が入ると、一時的に胃の上部にためた後、胃酸を分泌して消化し、十二指腸へと送り出します。機能性ディスペプシアでは、こうした胃の運動機能がうまく働かないため、すぐにおなかがいっぱいになる、胃がもたれるなどの症状が現れます。

また、胃の粘膜が胃酸の刺激に対して敏感になると、胃痛、みぞおちが焼ける感じといった症状が現れます。

機能性ディスペプシアは、自律神経の乱れが主な原因と考えられており、ストレスが誘因となる場合もあります。胃の内視鏡検査などで調べても症状の原因となる異常が見つからず、先にあげたような症状が週に1~2回以上の頻度で1カ月以上続いている場合、機能性ディスペプシアと診断されます。

主治医との信頼関係も重要

治療の基本は薬物療法で、胃の運動機能が低下している場合は消化管運動機能改善薬を、胃が知覚過敏になっている場合は胃酸分泌抑制薬を用います。これらの薬では効果がみられず、不安感が強い場合は、抗不安薬を用いる場合もあります。

機能性ディスペプシアの患者のうち、検査で重大な病気ではないことがわかっただけで、約3割は症状が改善したという報告もあります。このように、胃の不調は精神状態の影響を大きく受けるため、信頼できる主治医を見つけることも治療の大事なポイントといえます。

また、症状を改善するためには、生活習慣を見直すことも大切です。まず、刺激の強いものや脂肪分の多い食品は控えめにする、よく噛んでゆっくり食べる、食べ過ぎないなど、胃に負担をかけない食生活を心がけましょう。規則正しい生活を送る、十分な睡眠をとる、禁煙する、お酒を飲み過ぎない、といったことも症状の改善に有効です。

胃の病気の中には、胃がんのように初期にはほぼ無症状のものもあります。40歳を過ぎたら、年に1回は胃の定期検診を受けるようにしましょう。

(家庭の医学大全科ウェブサイト 編集部)