皮膚の病気

黒色表皮腫

こくしょくひょうひしゅ
Acanthosis nigricans

初診に適した診療科目:皮膚科 皮膚泌尿器科

分類:皮膚の病気 > 角化異常症

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どんな病気か

 皮膚が黒く、ごわごわしてくる角化症(皮膚の最表層の部分が厚くなる病気)です。良性型、悪性型、仮性型の黒色表皮腫に大別されます。

原因は何か

 良性型は内分泌障害・先天異常、悪性型は内臓の悪性腫瘍、仮性型は肥満に伴って生じます。高齢者では悪性型が多くみられます。

 良性型や仮性型は、インスリン抵抗性が基礎にあるために生じると考えられています。インスリン抵抗性とは、血糖値に比べて、血中のインスリンというホルモンが不適当に高い状態です。

 このような状態では、血中インスリンが、皮膚の細胞のインスリン様増殖物質レセプター(受容体)に結合して、皮膚の細胞が増殖し、黒色表皮腫になると考えられています。

症状の現れ方

 乳房下部、腋窩(腋の下)、項部(うなじ)、頸部(くび)、肘窩(腕の関節の屈曲部)、膝窩(膝関節の後面)、肛囲(肛門の周囲)などに皮膚の色素沈着(黒褐色のことが多い)、角質の増殖が現れます(図16)。

 全身の皮膚に、びまん性に褐色〜黒褐色の色素沈着がみられることもあります。毛髪が薄くなったり、毛が抜けやすくなることもあります。

 悪性型黒色表皮腫に合併する悪性腫瘍の大部分は腺がんであり、なかでも胃がんが多くみられます。この場合には皮疹が先行する場合と、同時に発生する場合の両方があります。

 高齢者にこの病気が生じた場合には、悪性腫瘍の有無を検索する必要があります。

検査と診断

 病理組織学的検査(皮膚を採取して顕微鏡で観察する検査)と血液学的検査を行います。血液学的検査では空腹時血糖、血中インスリン濃度を測定したり、耐糖能検査(上昇した血糖値を正常にもどす能力を調べる)を行います。

 高齢者の場合は悪性腫瘍の有無を検索します。

治療の方法

①5%サリチル酸ワセリンを1日2〜3回患部に塗ります。

②ビタミンA軟膏を1日数回患部に塗ります。

③尿素軟膏を1日数回患部に塗ります。

病気に気づいたらどうする

 まず、皮膚科専門医を受診して正しい診断をしてもらいます。必要があれば皮膚科専門医から糖尿病専門医を紹介してもらい、インスリン抵抗性の治療を受けるとよいでしょう。

関連項目

 糖尿病肥満症胃がん

(香川大学医学部皮膚科准教授 米田耕造)

図16 黒色表皮腫図16 黒色表皮腫