代謝異常で起こる病気
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大血管障害
だいけっかんしょうがい
Large vessel disease
分類:代謝異常で起こる病気 > 糖代謝の異常(糖尿病)
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どんな病気か
糖尿病の患者さんにおける大血管障害は、動脈硬化症を基に発症し、非糖尿病患者の2〜3倍とされ、女性の発症率が男性とほぼ同じであることも特徴です。
糖尿病の患者さんの死亡原因は、がんに次いで、第2位が動脈硬化性疾患で、とくに脳血管障害や心疾患の比重が大きくなっています。なかでも、最近では心疾患が最も多くなり、糖尿病患者の心筋梗塞の発症頻度は非糖尿病患者の3〜4倍です。脳血管障害のうちでは、脳出血よりも脳梗塞が多くなっています。糖尿病患者の脳梗塞の頻度は非糖尿病患者の約2倍で、若年者に多いのが特徴です。
冠動脈の病変は複数の血管で全長に及ぶ場合が多く、潜在的な心筋障害も伴いやすくなります。その結果、心不全を合併しやすく、死亡率も高く、再発しやすく、予後も悪くなります。
近年、日本の高齢者人口が増加したことや、糖尿病治療の向上につれ糖尿病の患者さんも高齢化したため、閉塞性動脈硬化症(ASO)も増え、糖尿病の患者さんの10〜15%前後に合併します。糖尿病性の足の病変も増え、潰瘍や壊疽を来し、足の切断に至ることもあります。
症状の現れ方
糖尿病の患者さんの脳梗塞の特徴は中・小血管のラクナ梗塞(脳深部や脳幹を灌流する小動脈に起こる小さな血栓性閉塞)であり、多発例が多くなっています。症状を認めずに、CTやMRIにより初めて多発性の病巣が明らかとなる場合も多いです。心疾患では、患者さんの訴える病状以上に病態が重い場合が多い傾向にあります。
糖尿病の患者さんの特徴として、神経障害があるためか、狭心症や心筋梗塞を起こしても、20〜50%は痛みを感じません(無症候性心筋虚血)。とくに、糖尿病神経障害の強い患者さんでこの傾向は強くなります。四肢の閉塞性動脈硬化症が多く、下肢の冷感・しびれ、間欠性跛行(一定の距離を歩くと足や下腿が痛くなるが、休むと改善する)、重症例では安静時疼痛、やがては下肢末端部の皮膚潰瘍・壊死を生じます。
検査と診断
脳梗塞が疑われる例では、MRIなどで無症候性脳梗塞や脳内動脈の狭窄病変、循環動態などを検索します。頸動脈病変の早期発見のため、頸動脈超音波検査で内膜中膜肥厚、プラークの有無を検査します。
定期的な心電図検査、できれば負荷心電図検査(トレッドミル負荷)を実施し、虚血性心疾患の早期発見に努めます。
閉塞性動脈硬化症の発見のためには、大腿・膝窩(膝の裏側のくぼみ)・後頸骨および足背動脈の脈が触れるか、腹部や頸部動脈で雑音が聞こえないか、血管の石灰化の有無などをX線写真でチェックします。
大動脈脈波伝播速度(PWV)や下肢/上肢の血圧比(API)の測定なども有用です。血管造影、血流シンチグラフィ、3D‐CTアンジオ、MRアンジオなどで、血管の病変を検索します。
*Pulse Wave Velocity:動脈硬化で大動脈が硬くなるほど、脈波が伝わる速度が速くなります。測定値(m/秒)が高いほど、動脈硬化が進行しています。
**Ankle Pressure Index:正常は1以上(足の血圧が上肢の血圧より高い)。0・9未満になると閉塞が疑われます。
治療の方法
糖尿病の患者さんの大血管障害の治療には、血糖をコントロールするのはもちろんですが、高血圧や脂質異常症の治療も重要です。糖尿病の患者さんでは、血圧は130/80㎜Hg未満、LDL‐コレステロール濃度は120㎎/dl未満(すでに心疾患がある場合には100㎎/dl未満)がすすめられます。またアスピリンなどの抗血小板薬も必要になる場合があります。