「摂食障害」は過度なダイエットが引き金になることも

「摂食障害」は過度なダイエットが引き金になることも

「摂食障害」は過度なダイエットが引き金になることも

2019.08.19

広告

広告

摂食障害は、自分の体重や体型に対して非常に強いこだわりを持ち、食事量や食べ方などに異常行動がみられる病気です。患者の9割以上は女性で、思春期以降に多発するといわれていますが、近年は子どもにも摂食障害の患者の増加がみられています。

摂食障害の2タイプは、正反対の症状にみえるが密接な関係も

摂食障害は大きく分けると、俗に「拒食症」と呼ばれる「神経性やせ症」と、「過食症」と呼ばれる「神経性過食症」があります。どちらも10代後半の思春期の女性に多くみられますが、20歳以降に発症することもあります。

●神経性やせ症

【発症のきっかけ】
やせていなければ存在価値が認められないなどと、体重や体型に対して非常に強いこだわりを持ち、そのプレッシャーや過度なダイエットが発症の原因になることが多いといわれています。

【特徴】
明らかにやせすぎているのに、本人はその自覚がなく、体重が増えることに強い恐怖感を持っています。そのため、食事量を極端に制限する、低エネルギーのものしか食べない、といった行動がみられます。さらに、やせるために過剰に運動をしたり、下剤や利尿剤を乱用したりする場合もあります。

●神経性過食症

【発症のきっかけ】
ダイエットによる無理な食事制限の反動や、ストレスを解消しようとして行う「むちゃ食い」などから始まることが多いといわれています。

【特徴】
一定時間内に大量の食べ物を食べる、という行動を頻繁に繰り返します。この「食べたい」という衝動は、自分の意志でコントロールすることができません。そして、過食した後、意図的に吐き戻したり、下剤を飲んで排泄したりするなど、体重を増やさないための行動をとることも特徴です。

 

また、神経性やせ症の人が極端な食事制限の反動として過食をするようになり、神経性過食症へと移行するケースもあります。したがって、これら2つのタイプの摂食障害の症状は正反対にみえますが、実際には非常に密接な関係にあるとされます。

心身に多大なダメージを与え、最悪の場合は命の危険も

摂食障害が体に与える悪影響として、極度の栄養不足と低体重による低血圧や心拍数低下、貧血、低体温のほか、無月経、骨量減少、低血糖、運動障害から意識障害などがみられるようになることもあります。成長期の小児では低身長や骨の未成熟、月経が来ない、などの問題がみられる場合があります。

また、過食と嘔吐を繰り返していると、栄養不足が深刻化するだけでなく、唾液腺が腫れたり、逆流した胃酸で歯がボロボロになったり、カリウムの不足により不整脈が出るなどの症状もみられ、これらが重症化して命に関わる危険もあります。

精神面でも、多くの場合、抑うつ症状、不安感、強いこだわり、自尊心の低下、不登校などがみられるようになります。

治療の第一歩は、本人が病気を受け入れ、病気の正しい知識を身につけること

摂食障害は基本的には適切な治療によって治る病気ですが、回復するには最低でも1年、平均で約5年かかるといわれており、病態によってはさらに長期化する場合もあります。一方で、治療を始めるのが早いほど、回復も早いといわれています。

拒食や過食などがあっても、患者がすすんで受診するケースはほとんどみられません。身近な人で摂食障害が疑われる場合には、できるだけ早く精神科や心療内科、なかでも摂食障害の治療を専門とする医師に相談することが大切です。

摂食障害の治療では、まず患者本人が病気であることを理解し、病気に対する正しい知識を身につけることが重要とされます。体がやせすぎの場合は、栄養状態をよくしたうえで認知行動療法などの心理療法を行います。また、過食の衝動を抑えるには、抗うつ薬が有効ともいわれています。

(家庭の医学大全科ウェブサイト 編集部)