妊娠中は血糖値が高くなりやすい──「妊娠糖尿病」に注意
妊娠中は血糖値が高くなりやすい──「妊娠糖尿病」に注意
2024.10.04広告
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妊娠糖尿病とは、妊娠前に糖尿病と診断されたことのない女性が、妊娠中に血糖値の基準を超えて糖の代謝異常を起こした状態をいいます。放置すると母体や胎児にさまざまな影響を及ぼすため、血糖値を適切にコントロールすることが大切です。
胎盤から分泌されるホルモンが影響
食後は血糖値(血液中のブドウ糖濃度)が上昇します。すると、すい臓からインスリンというホルモンが分泌され、その働きによって血液中のブドウ糖が細胞に取り込まれ、エネルギー源として利用されます。余ったブドウ糖はグリコーゲンや中性脂肪に合成され、肝臓や筋肉などに蓄えられます。このように、インスリンは糖の代謝を調節し、血糖値を正常範囲に保つ働きをしています。
しかし、妊娠中は胎盤から分泌されるホルモンの影響で、インスリンの働きが抑えられます。これは、母体の血糖を適度に上げて、胎児に十分なブドウ糖を供給するためです。
このバランスがとれていれば問題ありませんが、インスリンの抑制が強くなりすぎて母体の血糖値が基準値を超えてしまうことがあります。妊娠前に糖尿病の診断を受けていない女性が、このように妊娠中に初めて糖の代謝異常を起こした状態を妊娠糖尿病といいます。
肥満や糖尿病の家族歴、35歳以上の妊娠などでリスクが上昇
妊娠中に高血糖状態になると、母体では妊娠高血圧症候群や羊水過多症、流産、早産などのリスクがあります。
一方、胎児では、巨大児や新生児低血糖症、先天性異常、形成異常が起こる可能性があるほか、子宮内で胎児が死亡する場合もあります。
以下の人は、妊娠糖尿病になりやすい体質の可能性があるため、注意が必要です。
・肥満の人や糖尿病の家族歴がある人
・35歳以上での妊娠
・尿糖の陽性が続いている人
・原因不明の流産・早産・死産の経験がある人
妊娠中は必要な検査を受け、血糖値の状態を定期的に確認しましょう。
食事のとり方を工夫して血糖値の急上昇を防ぐ
妊娠糖尿病の診断では、随時血糖や空腹時血糖、ブドウ糖負荷試験といった血液検査が行われます。
妊娠糖尿病の治療では、食事療法が欠かせません。ただし、胎児にとって必要な栄養をきちんと摂取しつつ、母体の血糖値を適切にコントロールすることが大切です。栄養バランスのよい食事を適切な量、規則正しく食べることを心がけましょう。それでも改善しない場合は、1日の食事を6回に分けて食べる(分割食)といった工夫で、食後の血糖値の上昇をゆるやかにします。
食事療法で血糖が下がらない場合は、インスリンを注射する薬物療法を行います。
多くの場合、出産後に血糖値は正常に戻ります。ただし、妊娠糖尿病だった人は将来糖尿病を発症しやすいとされているため、出産後も年に1回は血糖を測定し、高血糖の早期発見・早期治療に努めることが大切です。