多汗症――生活に支障が出るほど大量に汗をかくのはなぜ?
多汗症――生活に支障が出るほど大量に汗をかくのはなぜ?
2024.07.05広告
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とくに暑いわけでもないのに大量に汗をかく「多汗症」は、悩んでいる部位によってさまざまな治療法があります。生活に支障をきたすほど症状が強い場合は、医療機関に相談しましょう。
全身性と局所性の2タイプがある
多汗症は、暑さや運動などのきっかけがないにもかかわらず、大量の汗をかく病気です。汗を分泌する汗腺には、エクリン汗腺とアポクリン汗腺の2種類があります。体温が上昇すると、交感神経からアセチルコリンという物質が放出され、エクリン汗腺にある受容体に結合して汗が出ます。多汗症は、エクリン汗腺からサラサラとした汗が大量に出て、なかなか止まらない状態をいいます。
多汗症には、全身に大量の汗をかく全身性多汗症と、わきや手足、顔面、頭部など体の一部に汗が増える局所性多汗症があります。前者は感染症や内分泌代謝異常、神経疾患などの病気が、後者は外傷や腫瘍などの神経障害が影響している場合があります。一方、どちらのタイプも、原因がわからない原発性のものも多くみられます。
日常生活に支障をきたしている場合は受診を
原因不明の多汗が6カ月以上続いていることに加え、以下の項目のうち2つ以上当てはまる場合、多汗症の可能性があります。
①発症が25歳以下
②左右対称性に汗が出る
③睡眠中は汗が止まる
④週に1回以上、多汗で困ることがある
⑤家族に似た症状のある人がいる(家族歴)
⑥症状によって日常生活に支障が出ている
多汗症を誰にも相談できず、悩んでいる人は少なくありません。多汗症は治療が可能な病気なので、日常生活に支障をきたしている場合は皮膚科に相談しましょう。
外用薬、注射、内服薬などさまざまな治療法がある
多汗症の治療法で第1選択となるのが外用薬の塩化アルミニウム製剤で、汗腺にふたをする働きによって発汗を抑えます。薬によって皮膚がかぶれた場合は、治療を休止したりステロイド外用薬を使用したりするなどして様子をみます。手のひらや足の裏の多汗症には、「水道水イオントフォレーシス」という治療法も有効です。水道水を入れた容器に手や足を入れ、微量の電流を流すことで汗腺の働きを低下させるものです。
これらの方法でも症状が改善しない場合は、ボツリヌス毒素製剤を注射する治療法が選択されます。注射によって交感神経に働きかけてアセチルコリンの放出を抑え、発汗を減らします。
このほか、アセチルコリンが汗腺に作用するのを妨げて発汗を抑える抗コリン薬があり、内服薬(手足、わき、顔面、頭部)と外用薬(わきのみ)のいずれも健康保険が適用されます。また、手のひらの多汗症のみ、ほかの治療法で効果がみられなかった場合に交感神経遮断術が適応になりますが、手のひら以外からの発汗が増える「代償性発汗」が起こるので、治療を受ける前に医師とよく相談する必要があります。
症状に悩んでいる人は我慢せず、専門医を受診しましょう。