大腸の粘膜に炎症が起き、つらい症状を伴う「潰瘍性大腸炎」

大腸の粘膜に炎症が起き、つらい症状を伴う「潰瘍性大腸炎」

大腸の粘膜に炎症が起き、つらい症状を伴う「潰瘍性大腸炎」

2023.03.20

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潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に潰瘍やただれができる病気で、国の指定難病の1つとなっています。現在のところ完治はできないものの、適切な治療を行うことで症状を落ち着かせ、健康な人と同様の生活を送れるようになってきています。気になる症状があれば、早めに消化器内科を受診しましょう。

症状が落ち着いた寛解期を維持することが治療の目標

潰瘍性大腸炎の原因は明らかになっていませんが、免疫機能の異常や腸内細菌、遺伝的要因などが関与していると考えられています。

潰瘍性大腸炎の典型的な症状として、初期では白っぽい粘液が付着した便がみられます。その後、病気が進行すると、血便や下痢、腹痛などが現れ、重症になると発熱や体重減少、貧血といった全身症状が起こります。

潰瘍性大腸炎の診断においては、血液検査や便検査、大腸内視鏡検査などが行われます。潰瘍性大腸炎には、炎症が続いて症状が強く現れる「活動期」と、症状が落ち着いている「寛解(かんかい)期」があり、できるだけ長く寛解期を維持することが治療の目標となります。

まずは薬で炎症を抑える

治療法は薬物療法が中心で、大腸の炎症を抑える「5-アミノサリチル酸製剤」や「ステロイド薬」、過剰になっている免疫反応を抑える「免疫調節薬」が用いられます。ステロイド薬を使っても症状が改善しない場合は、炎症物質や炎症に関わる細胞の働きを抑える薬などを併用します。

薬物療法で十分な効果が得られない場合には、「血球成分除去療法」が行われることがあります。これは、血液をいったん体内から取り出して、炎症の原因となる、異常に活性化した白血球を外部装置でろ過し、再び血液を体内に戻す治療法です。

症状が治まっても治療を続けることが大切

多くの場合、これらの内科的治療で症状が改善します。しかし、重症で内科治療が無効な場合や副作用などで内科治療が行えない場合、あるいは、大量の出血や穿孔(せんこう:大腸に穴があく)がある場合、大腸がんまたはその疑いがある場合には、大腸をすべて摘出する手術が検討されます。

大腸全摘術を行った場合、かつては小腸で人工肛門を作るのが一般的でした。近年では、小腸で便をためる袋を作って肛門につなぐ手術が主流となっており、術後は健康な人とほぼ変わらない生活を送れるようになっています。

潰瘍性大腸炎は、下痢や血便といった症状が治まっても、大腸の粘膜にはまだ炎症が残っている場合が多く、治療を中断してしまうと再び活動期に戻ってしまうリスクが高くなります。そのため、粘膜の炎症が治癒するまできちんと治療を続けることが大切です。

(家庭の医学大全科ウェブサイト 編集部)