女性に多い甲状腺ホルモンのバランス異常「橋本病」

女性に多い甲状腺ホルモンのバランス異常「橋本病」

女性に多い甲状腺ホルモンのバランス異常「橋本病」

2021.09.03

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橋本病は、甲状腺ホルモンの分泌量が低下する自己免疫疾患のひとつで、慢性甲状腺炎とも呼ばれます。女性に多い病気で、月経不順のほか、不妊や流産の原因になることもあるため、気になる症状がある場合は早めに甲状腺の専門医がいる医療機関を受診しましょう。

自己免疫の異常により慢性的な炎症がおこる

甲状腺は、のどぼとけの下にある小さな臓器で、正面からみると蝶が羽を広げたような形をしています。主な働きは甲状腺ホルモンを産生することで、甲状腺ホルモンは全身の臓器や細胞の代謝を促すほか、妊娠や胎児の成長にも重要な役割を担っています。

橋本病では、自己免疫の異常により甲状腺の細胞を攻撃する自己抗体がつくられ、甲状腺に慢性的な炎症がおこります。炎症がひどくなると、甲状腺ホルモンの分泌量が低下し、さまざまな症状が現れます。女性に多い病気で、とくに30~40歳代の女性に多くみられます。

1912年に橋本策(はかる)博士が世界で初めてドイツの医学誌に発表したために、「橋本病」という病名がつけられました。

首の腫れ、疲れやすさのほか、極度の寒がりになるのが特徴

症状は、甲状腺が腫れることによる症状と、甲状腺ホルモンの異常による症状に大きく分けられます。前者では、首の腫れやしこり、圧迫感、ものを飲み込むときの違和感などがあります。

後者では、無気力、疲れやすい、全身のむくみ、記憶力の低下、皮膚の乾燥などがあげられます。新陳代謝の低下により体内で熱がつくられにくくなるため、極端に寒さに弱くなるのも特徴です。また、食欲がないのに体重が増える、便秘がちになる、脈が遅くなる、息が苦しくなる、といった症状がみられる場合があります。

また、女性の場合、月経不順や月経過多になるほか、不妊や流産の原因になることもあります。

適切な治療により、妊娠・出産は可能

橋本病の診断には、血液検査と超音波検査が行われます。血液検査では、血中の甲状腺ホルモンと甲状腺刺激ホルモンの濃度、自己抗体の有無などを調べます。一方、超音波検査では、甲状腺の形や大きさ、内部の状態を調べるとともに、甲状腺がんの合併がないかを確認します。

橋本病と診断されたとしても、甲状腺機能に異常がない場合は、治療は必要ありません。ただし、年1回程度、定期的に検査を行い、経過を観察します。

甲状腺機能の低下が認められた場合は、薬物療法により不足している甲状腺ホルモンを補います。

橋本病であっても、適切な治療を行うことにより、妊娠・出産することは可能です。薬によりホルモン量を調整して甲状腺機能を維持する必要があるため、主治医の指示に従って治療を続けることが大切です。

(家庭の医学大全科ウェブサイト 編集部)