遺伝的要因による疾患

連鎖解析

れんさかいせき
Linkage analysis

分類:遺伝的要因による疾患 > 遺伝の様式

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 約30億塩基対のヒトゲノム(全遺伝情報)を解読し、病気に関係する遺伝子を特定するためには膨大な作業が必要です。そのためには、効率よく疾患関連遺伝子を探索することが研究者に要求されています。この目的を果たす鍵は2つあります。

 ひとつは「組み換え現象」です。受精のための精子や卵を形成する過程である減数分裂の時、各染色体は親から受け継いだままを配偶子(精子、卵)に載せて子ども世代に伝えるのではなく、相同染色体間で交差し、複雑に組み換えを行うことがわかっています。1回の減数分裂で全ゲノムのおおよそ30カ所で組み換えが起こることがわかっています。

 したがって、父親由来の染色体は父親の両親、すなわち祖父由来と祖母由来の相同染色体が互いに組み換えられ、子どもに伝えられることになります。卵を通して母親由来の染色体も同様に子どもに伝えられます。

 もうひとつの鍵は「遺伝子多型」です。ゲノムDNA(デオキシリボ核酸)のなかにはたくさんの遺伝子多型が存在し、それを明確に認識できる技術を人類は手に入れました。明らかに認識できる遺伝子多型を多型性マーカーと呼び、ゲノム解析の有用なツールになっています。

 まず、スクリーニング(ふるい分け)段階として、遺伝病の存在する家系の協力を得て、多数の多型性マーカーを用いて全ゲノムを解析します。発症と多型性マーカーから明らかになったそれぞれの遺伝子型を基に、調べたい病気と連鎖する多型性マーカーを特定します。その遺伝子座位を中心にさらに詳細に解析し、遺伝子の変異など発病に関係する変化が起きている遺伝子を探索します。

 このように、疾患の原因遺伝子の染色体上の位置を初めに決めていく方法を「ポジショナル・クローニング法」と呼んでいます。

 1980年代後半から、この方法で多くの原因遺伝子が発見されてきました。その結果は、遺伝子診断や分子病態治療薬の開発に大きく貢献しました。

(近畿大学理工学部生命科学科教授 田村和朗)