食中毒
腸炎ビブリオ食中毒
ちょうえんびぶりおしょくちゅうどく
Vibrio parahemolyticus food poisoning
初診に適した診療科目:内科
分類:食中毒 > 細菌性食中毒
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どんな食中毒か
日本の食中毒の原因のなかで、サルモネラとともに最も発生頻度の高い食中毒のひとつです。この菌は、1950年、大阪府下で発生したシラス食中毒事件の時、日本で発見されました。
腸炎ビブリオは汽水域(淡水が混ざる海水域)を中心に沿岸海水中に生息しています。これは、この菌のもつ好塩性という性質によります。自然界に生息する腸炎ビブリオの多くはヒトに病気を起こしません。ごく一部の菌が、TDH/TRHと呼ばれる病原因子産生能をもち、この菌に汚染された海産魚介類を食べることで食中毒になります。
症状の現れ方
さまざまなタイプの下痢と腹痛が必ず起こります。嘔吐や発熱を伴うこともあります。ほかの食中毒に比べ、発病初期は重症になる傾向があります。
検査と診断
夏季の大人の食中毒患者で、海産魚介類(とくに生)をおおよそ10〜30時間(潜伏期)前に食べていれば、この食中毒の疑いが濃いといえます。
症状から、ほかの食中毒と区別するのは難しく、確定診断にはTCBS寒天培地など、この菌を分離しやすい培地で菌を検出します。分離された菌がTDH/TRHの産生能をもっているかどうかを調べることで、病原性を有する菌か否かを判定します。
治療の方法
対症療法が中心ですが、下痢止め薬は用いないほうが無難です。抗生物質は病期を短縮するといわれていますが、十分な根拠はありません。多くの患者さんは数日で快方に向かいます。しかし、まれに死亡することもあるので、十分な注意が必要です。
病気に気づいたらどうする
医療機関を受診するのが原則です。下痢、発熱、嘔吐はいずれも体の水分を失うことになるので、市販のスポーツ飲料などで水分の補給を心がけ、脱水症に陥るのを防ぎましょう。
体力のない高齢者や幼児では、嘔吐物の誤嚥(間違って嘔吐物を気管に吸い込むこと)にも注意してください。疑わしい食事をいっしょに食べた人に連絡し、同じような症状がないかを確かめることが、食中毒か否かの診断に役立ちます。