感染症

野兎病

やとびょう
Tularemia

初診に適した診療科目:内科

分類:感染症 > 感染症法改正(2003年)で追加された感染症

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どんな感染症か

 野兎病は野兎病菌という細菌の感染によって起こる急性の熱性疾患です。主に感染した野生のノウサギやネズミなどやその死体に触れたり、解体した時に手指から細菌が侵入して感染します。また、ダニやアブなどに刺されたり、この菌に汚染された水、食べ物、ほこりを飲んだり吸い込んだりしてかかることもあります。

 過去には関東から東北地方で多くの患者報告がありました。まれですが現在もあります。米国やヨーロッパでは毎年多数の感染者が報告されています。

症状の現れ方

 潜伏期間は3〜7日がほとんどで突然の発熱、頭痛、悪寒、筋肉痛、関節痛などのかぜ様症状があり、その後、脇の下や肘などのリンパ節がはれる場合が多くあります。また、菌が侵入した指などに潰瘍や壊死が起きることがあります。日本では死亡例はありません。

検査と診断

 山野での活動やノウサギなどの野生動物との接触のあったのちに、発熱やリンパ節のはれなどの症状があった場合には野兎病を疑い、血液中の野兎病菌に対する抗体検査や病巣部からの細菌培養や遺伝子検査が行われます。

治療の方法

 抗生物質が有効で、とくに早期の治療が有効で検査結果を待たずに開始されることがあります。テトラサイクリン剤やフルオロキノロン剤、ストレプトマイシンやゲンタマイシンが有効ですが、ペニシリン系やセフェム系薬剤は無効です。リンパ節が化膿した場合は外科的に切開が必要になることもあります。

病気に気づいたらどうする

 野外での活動ではダニなどに刺されないようにすることや、病気や死亡した野生動物には触れないようにするなどの注意が必要です。野兎病に対するワクチンは日本では使用されていません。

 山野での活動や野生動物との接触があったのち発熱や頭痛、悪寒、リンパ節の腫脹(はれ)などが現れた場合にはただちに医師の診察を受けてください。ヒトからヒトへの感染はありません。

(国立感染症研究所獣医科学部第三室長 棚林 清)