感染症

〈新4類〉ウエストナイル熱(西ナイル熱)

〈新4類〉うえすとないるねつ(にしないるねつ)
West Nile fever

初診に適した診療科目:内科

分類:感染症 > 感染症法改正(2003年)で追加された感染症

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どんな感染症か

 ウエスト(西)ナイルウイルスが原因の感染症です。ヒトはウエストナイルウイルスに感染した蚊に刺されることによって感染します。

 ウエストナイルウイルスは従来アフリカ、ヨーロッパ、中東、中央アジア、西アジア、オーストラリアに分布していましたが、1999年北米に侵入し、その後米国やカナダで夏季に流行がみられています。ウイルスはすでに中米や南米にも侵入しています。

症状の現れ方

 ウイルスに感染後、2〜14日してから高熱で発症します。頭痛、背部の痛み、筋肉痛、食欲不振、吐き気などの症状がみられます。リンパ節のはれ、胸部、背中、腕の発疹が現れることもあります。これらの急性症状は3〜6日で消失します。

 一方、感染者のごく一部に、頭痛、高熱、方向感覚の喪失、麻痺、昏睡、震え、けいれんなどの脳炎症状(ウエストナイル脳炎)が現れます。また、筋力低下がみられることもあります。このような脳炎の患者さんは高齢者に多く発生し、約10%が死亡します。

検査と診断

 ウエストナイルウイルスは現在日本には存在しないので、発症前の2週間以内に前述の流行地域から帰国したという情報が診断に重要です。症状のみでウエストナイル熱を診断することは難しく、血液や脳脊髄液からウイルスやその遺伝子を検出すること、あるいは特異的な抗体を検出することで診断を確定します。

 ウエストナイル熱は他のウイルス性急性熱性疾患と、ウエストナイル脳炎は日本脳炎など他のウイルス脳炎との区別が必要です。

治療の方法

 ウエストナイルウイルスに対する治療薬はなく、対症療法が中心です。

病気に気づいたらどうする

 ウエストナイルウイルス流行地域から帰国後、前述の症状が現れたら、感染症科や内科を受診する必要があります。ウエストナイルウイルスはヒトからヒトへは感染しません。また、感染したヒトを刺した蚊から感染することもありません。

(国立感染症研究所ウイルス第一部部長 倉根一郎)