感染症

急性腎盂腎炎

きゅうせいじんうじんえん
Acute pyelonephritis

初診に適した診療科目:小児科 内科

分類:感染症 > 細菌・ウイルスなどによる感染症/腎臓・尿路

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どんな感染症か

 大腸菌など、主に大腸からの細菌が尿道口から侵入し、膀胱から腎盂にまで上行して炎症を引き起こす細菌感染症です。20〜40代の女性に好発します。

 女性の急性腎盂腎炎の多くは、感染の原因となる尿路の病気(尿路基礎疾患:尿の流れに障害を起こす病気)を合併していることはありません。しかし、繰り返し再発する人や男性の場合は、尿路基礎疾患が原因となっていることが強く疑われます。

 主な尿路基礎疾患としては、尿路結石、尿路腫瘍、尿路奇形(とくに膀胱尿管逆流症)などが考えられます。

症状の現れ方

 主な症状は、悪寒(寒気)、戦慄(震え)、発熱、腰背部痛などで、急激に症状が現れます。感染して発症した腎臓の部位(肋骨下方の右あるいは左側腹部)を軽く叩くだけで痛みを訴えるのが特徴です。

 排尿痛や頻尿など膀胱炎の症状が先行する場合もあり、また、尿の混濁が肉眼でわかることもあります。吐き気や嘔吐などの消化器症状を伴うこともまれではありません。

検査と診断

 尿路感染症の診断には、尿検査が必須になります。まず、顕微鏡で尿中の白血球と細菌の存在を確認します。白血球が一定数以上認められると、尿路感染症が強く疑われます。加えて、発熱や腰背部痛などの特徴的な症状を伴っていれば急性腎盂腎炎と診断されます。

 また、細菌の種類と量を検索するために尿の細菌培養検査を、併せて各種抗菌薬の感受性(効き目)検査を行います。培養の結果が出るまでには数日かかりますが、治療に有用な情報となります。

 再発した場合は、尿路感染症の原因となった病気の有無を調べる必要があります。超音波や放射線などを使用する腹部の画像検査は有用な検査法のひとつです。

治療の方法

 原因は細菌感染であるため、治療は抗菌薬の服用が中心になります。

 比較的全身状態がよい軽症の場合は、適切な抗菌薬治療で症状はすみやかに改善します。治療の期間は通常1〜2週間で、治療を終了したあと、再発の有無を確認するために一定期間(約1〜2週間)をおいて尿検査を行います。治療中は安静と十分な水分補給が必要です。症状が改善しない場合は入院を考慮します。

 発熱の程度が強い、水分や食事が十分に摂取できないなど重症の場合は、入院のうえ抗菌薬の点滴治療を行います。発熱が治まれば、経口治療に変更可能です。

 なお、尿路基礎疾患が見つかった場合は、併せてその治療も必要です。尿路基礎疾患をそのまま放置すると、腎盂腎炎を繰り返す可能性が高くなります。腎盂腎炎の治療と同時に治療することもありますが、多くは炎症が治まってから治療を開始します。

病気に気づいたらどうする

 急性腎盂腎炎の治療では、適切な抗菌薬の服用が必要です。放置すると細菌が血液中に侵入し、重症の感染症(敗血症)に移行することもあるので、早めの受診をすすめます。受診するまではなるべく安静を保ち、十分な水分補給に努めるようにしてください。

(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科泌尿器病態学教授 公文裕巳)