感染症

インフルエンザ

いんふるえんざ
Influenza

初診に適した診療科目:小児科 内科

分類:感染症 > 細菌・ウイルスなどによる感染症/呼吸器

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どんな感染症か

 インフルエンザは、インフルエンザウイルスによって起こるウイルス性呼吸器感染症です。世界中で、全年齢にみられる普遍的で最も頻度の高い重要な病気で、小児と高齢者で重症化しやすいとされています。流行の規模は一定ではありませんが、毎年冬季に流行がみられ、学級閉鎖の原因や、高齢者施設における施設内流行の原因にもなります。

 A・B・C型のインフルエンザウイルスがありますが、臨床的に問題になるのは、A型の2亜型(Aソ連型とA香港型)とB型です。2009年春には豚由来の新型インフルエンザウイルスA型が出現しました。このウイルスはその後世界中に広まり、WHO(世界保健機関)は6月にパンデミック(世界的大流行)の宣言をしました。日本においても同年の秋から冬にかけて、小児を中心に非常にたくさんの方が感染しました。インフルエンザはヒトの鼻咽頭で増殖したウイルスが、飛沫感染でほかのヒトの鼻咽頭の細胞に感染して発症します。

症状の現れ方

 いずれの型のインフルエンザも1〜3日の潜伏期をへて、悪寒を伴う高熱、全身倦怠感を伴って急激に発症します。鼻汁、咳、咽頭痛などの呼吸器症状や、吐き気、嘔吐、下痢などの消化器症状を伴うことが多く、頭痛、関節痛も現れます。筋炎を起こすと筋肉痛が生じ、下肢の場合は歩行困難になることがあります。

 症状の程度・持続期間は、流行ウイルスの種類、年齢、過去の罹患状況などによってさまざまですが、合併症がない場合、1週間〜10日以内に軽快します。発症した場合の重症度は、ウイルス側の要因(前回の流行からの期間やウイルスの変異の度合い)と、個体側の要因(感染歴や免疫状態)などによって決まります。

 乳幼児は初感染であることが多く、成人に比べて重症化しやすく、また高熱による熱性けいれんを起こすことがあります。細菌性の肺炎や中耳炎の合併があると高熱が続きます。

検査と診断

 咽頭ぬぐい液や鼻汁材料を用いた、インフルエンザの抗原検出キットで10〜15分の短時間に判定することができ、A・B型の判別も可能です。

 血清反応による診断では、発症時と2〜4週後のペア血清でCF(インフルエンザ共通抗原)、HI(型特異的抗原)抗体価の有意な上昇でわかります。臨床ウイルス学的にはウイルスの分離を行い、流行株の抗原的性状を解析します。

治療の方法

 対症療法が主体になります。高熱に対しては冷却とともに、アセトアミノフェン(カロナール)などの解熱薬を使います。呼吸器症状に対しては鎮咳去痰薬、抗ヒスタミン薬、気管支拡張薬などを、消化器症状に対しては整腸薬や止痢薬を用います。細菌性の肺炎などを合併している場合は、抗生剤を使用します。水分の補給に努め、脱水にならないように注意します。

 特異的な治療法として、抗ウイルス薬があります。A型に対してはアマンタジン(シンメトレル)がありましたが、近年、耐性ウイルスが出現したため使用されなくなりました。A・B型両方に効果があるものとして、ノイラミニダーゼ阻害薬(タミフル、リレンザ)が用いられていますが、近年タミフル耐性のAソ連型ウイルスが出現し、世界中に広まりました。一方、前述の豚由来新型インフルエンザウイルスA型に対してはタミフル、リレンザとも効果があります。いずれも発症2日以内の使用開始が効果的です。

予防の方法

 現在、不活化インフルエンザワクチンの皮下接種が、主にリスクの高い人に対して、重い合併症を予防する目的で行われています。65歳以上の高齢者と、60歳以上の心肺疾患をもつ人が対象で、法律による接種が可能になっています。

 乳幼児に対するワクチンの予防効果や軽症化については、現在研究中です。

病気に気づいたらどうする

 飛沫によって他人に感染するので、一般的に発熱などの主要症状がなくなるまで登校や出社は停止します。家庭でも感染予防のため、患者さんの気道分泌物の付着した物の扱いに注意し、手洗いとうがいを励行します。

(札幌医科大学医学部小児科学講座教授 堤 裕幸)