感染症

流行性髄膜炎(急性脳脊髄膜炎)、その他の化膿性髄膜炎

りゅうこうせいずいまくえん(きゅうせいのうせきずいまくえん)、そのたのかのうせいずいまくえん
Epidemic cerebrospinal meningitis (Acute cerebrospinal meningitis), Other suppurative meningitis

初診に適した診療科目:小児科 内科

分類:感染症 > 細菌・ウイルスなどによる感染症/脳

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 流行性髄膜炎は通常、髄膜炎菌性髄膜炎のことを指し、アフリカ、ヨーロッパ、アジア、北南米を含む世界各地で流行がみられますが、日本での患者数は年間10〜20人程度です。その他の化膿性髄膜炎も含めて予後は不良で、死亡例もあり、後遺症を残すことが多い病気です。

どんな病気か

 髄膜炎には細菌性と無菌性があり、細菌性のなかに、髄膜炎菌によって起こる髄膜炎菌性髄膜炎と、その他の細菌によって起こる細菌性髄膜炎(化膿性髄膜炎)があります。

 髄膜炎菌には多くの血清型がありますが、そのうちA、B、C、Y、W‐135が多く、A、B、Cで全体の90%以上を占めます。髄膜炎菌性髄膜炎の患者さんを診断した医師は全員、1週間以内に保健所に届け出ることになっており、2008年10人(2009年1月6日現在報告数)、2007年17人、2006年14人、2005年10人、2004年21人が報告されています。

 アフリカではとくにA型が多いのですが、アフリカ中央部の髄膜炎ベルトと呼ばれる地域ではW‐135型の流行が認められており、また中東では、イスラム教徒のメッカ巡礼で感染発症する人が多いことから、これらの地域へ行く場合には髄膜炎菌性髄膜炎ワクチンの接種がすすめられます(国内では市販されていない)。

 一方、それ以外の細菌性髄膜炎は全数報告は義務づけられておらず、全国約500の基幹病院を受診した患者さんだけが報告されていて、年間報告数は200〜300人です。全国では、この何倍も患者さんが発生していると考えられます。

 年齢ごとに原因病原体の頻度は異なり、生後3カ月未満ではB群連鎖球菌、大腸菌などが多く、生後3カ月以上では肺炎球菌、インフルエンザ桿菌(ほとんどがb型:Hib)が多く認められます。そのほか、黄色ブドウ球菌、リステリア菌、腸球菌などがあげられます。肺炎球菌性髄膜炎はHib髄膜炎より致死率も高く、予後は不良といわれています。

症状の現れ方

 年長児、成人では発熱、嘔吐、頭痛に加えて、意識障害、けいれん、運動失調を伴うことがあります。診察所見では、項部(うなじ)硬直やケルニッヒ徴候(股、膝を直角に曲げた状態から膝を伸ばそうとしてもまっすぐに伸ばせない症状)といった髄膜刺激症状が認められます。

 新生児期では低体温、無呼吸、易刺激性、不機嫌といった非定型的な症状だけの場合もあります。乳児では大泉門が膨隆します。急速に病状が進行し、心肺停止、ショック状態で病院に搬送されることもある重症疾患です。

 そのほか、硬膜下水腫、硬膜下膿瘍、脳膿瘍、脳梗塞を合併することもあり、水頭症、てんかん、精神運動発達遅滞、難聴を残すことがあります。

検査と診断

 髄液および血液の細菌培養が重要です。塗抹、抗原検査も病原菌の推定につながります。髄液中の細胞数(多核球が中心)が数百〜数千、時に数万/mm3と著しく増え、髄液の白濁を認める場合もあります。蛋白濃度は上昇し、糖濃度は血糖の40%以下に減少します。

 血液検査では、白血球数の増加(重症例では時に減少)、CRP値の増加、重症例では血小板の減少、血液凝固機能の異常を伴い、DIC(播種性血管内凝固症候群)を合併することがあります。

治療・予防の方法

 適切な抗菌薬を一刻も早く、十分量点滴で投与します。培養の結果が出るまでは、年齢、発生状況などから原因菌を推定し、薬剤耐性菌の可能性も考慮して、抗菌薬はセフォタキシム、セフトリアキソン、パニペネム/ベタミプロン合剤などでの治療を考慮します。リステリア菌の場合はアンピシリンの投与が必要です。

 予後は一般に悪く、肺炎球菌では15・3%、Hibで3・8%、髄膜炎菌性髄膜炎で7・5%が死亡するといわれています。発症年齢、抗菌薬投与までの時間、細菌の種類、病気の進行速度によって予後は変わりますが、後遺症を約30%に残します。

 肺炎球菌については、小児に予防ワクチンが接種されている国もありますが、日本で接種可能な肺炎球菌ワクチンは23価多糖体肺炎球菌ワクチンのみで、2歳以上が適応です。米国などでは7価結合型ワクチンが生後2カ月から接種されています。

 なお、日本で7価結合型の肺炎球菌ワクチンの臨床治験は終了しているので、承認されれば国内でも接種可能となります。

 Hibワクチン(ヒブワクチン)は、2008年12月19日以降、国内でも接種可能となりました。

病気に気づいたらどうする

 入院施設のある小児科あるいは内科を至急受診してください。

関連項目

 無菌性髄膜炎

(国立感染症研究所感染症情報センター第三室長 多屋馨子)