直腸・肛門の病気

便秘

べんぴ
Constipation

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どんな障害か

 便秘には、排便回数が少ない(3日に1回未満、週2回未満)、便が硬い、いきまないと出ない、残便感がある、便意を感じない、便が少ないなど多様な訴えが含まれます。その頻度は全人口の2〜12%くらいと考えられ、一般に年齢とともに増加し、また男性よりも女性に多くみられます。

原因は何か

 ほとんどの便秘は、腸のはたらきに原因があります(機能的便秘)。

 大腸の便を送り出す力が弱いと、便の回数や量が少ないタイプの便秘になります(弛緩性便秘)。

 直腸のはたらきに原因があると、便意を感じないとか、いきんでも便が出にくいタイプの便秘になります(直腸性便秘)。

 また、大腸の緊張やけいれんにより、便がとどこおりやすいために起こる便秘もあります(けいれん性便秘)。

 腸のはたらきに影響を与えるものとしては、食事、生活習慣、運動、ストレスなどがあります。

 食事として摂取する食物繊維の量が少ないと、便が小さく硬くなり、大腸を通過しにくくなります。トイレをがまんする習慣は便意を感じにくくさせ、寝たきりなどで体を動かさなくなると腸の蠕動が弱くなり便秘になります。また、ストレスは脳を介して腸のはたらきに影響することがわかっています。

 大腸がんやクローン病といった、大腸が狭くなる病気で起きる便秘症状は、器質的便秘と呼ばれます。これらの病気の原因はまだよくわかっていませんが、環境、遺伝子、食べ物などの多数の因子が関与して発症すると考えられています。

症状の現れ方

 便秘症状の現れる時期はさまざまです。一般には、高齢になるにしたがって増える傾向にありますが、若い女性の便秘は思春期のころに始まることも少なくありません。

 旅行や生活の変化に伴う数日間だけの一過性の便秘(単純便秘)と、症状が1〜3カ月以上続く慢性便秘があります。

 それまで規則的であった排便が便秘に変化した場合や、便に血が混ざるとか、腹痛を伴うような場合は、前述の器質的便秘が疑われるので、早めに検査を受ける必要があります。

検査と診断

 器質的便秘が疑われる場合は、まず大腸の検査を行います。これには注腸X線検査と大腸内視鏡検査があり、ポリープやがん、炎症性腸疾患などを診断します。

 機能的な慢性便秘を詳しく調べる検査として、X線マーカーを服用して大腸の通過時間を調べる検査や、バリウムによる模擬便を用いて、排便時の直腸の形や動きを調べる排便造影検査があります。

治療の方法

 食事・生活指導、運動、緩下剤といった保存的治療法が主体となり、これらをうまく取り入れて便通をコントロールするようにします。日常の食生活で不足しがちな食物繊維を補うためには、市販の食物繊維サプリメント(オオバコ、小麦ふすまなど)を活用するのもよい方法です。

 緩下剤は、腸への刺激がなく、水分を保持して便を軟らかくする酸化マグネシウムなどの塩類下剤を主体として使用します。センナ系、漢方などの速効性の刺激性下剤は、できるだけ常用しないように心がけます。刺激性下剤を常用すると、次第に腸が下剤の刺激に慣れて効果が鈍くなり、ますます便秘が悪化することがあるためです。

 直腸瘤が便秘の原因となっている場合は、その症状と大きさから判断して手術で治療することもあります(直腸瘤)。

(社会保険中央総合病院大腸肛門病センター部長 山名哲郎)