のどの病気
扁桃病巣感染症
へんとうびょうそうかんせんしょう
Tonsillar focal infection
分類:のどの病気 > 扁桃の病気
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どんな病気か
扁桃病巣感染症とは、扁桃自体の症状はほとんどないか、または軽度の咽頭痛、異物感程度にすぎないにもかかわらず、皮膚、腎臓、関節などにさまざまな障害を起こす病態です。この場合、扁桃を摘出することで症状改善が得られることから、原因が扁桃にあると考えられ、扁桃病巣感染症と呼ばれています。
代表的な二次疾患としては、掌蹠膿胞症、IgA腎症、胸肋鎖骨過形成症がありますが、そのほか乾癬、関節リウマチ、微熱も扁桃病巣感染症に含まれます。
原因は何か・症状の現れ方
掌蹠膿胞症では、主に手のひらと、足底部にだけ小さな膿疱が多数現れ、赤くなり、皮膚がむけることを繰り返すものです。皮膚科の病気で、女性に多くみられます。原因としては、免疫異常、金属アレルギーなどがいわれていますが、現在では扁桃病巣感染症が強く関与していると考えられています。
IgA腎症は、初期には血尿と浮腫(むくみ)程度しか自覚症状がありません。しかし、長期にみると進行性の病気で20〜40%が腎不全になります。IgA腎症の20〜30%は、扁桃炎に代表される上気道炎を契機に発症し、尿症状の悪化を繰り返します。
胸肋鎖骨過形成症では、鎖骨、胸骨、肋骨関節が腫脹し、痛みを伴います。これも女性に多い疾患です。
検査と診断
診断には自覚症状、局所所見、血液検査、尿検査のほかに、扁桃と二次疾患の関係を調べることが必要です。これには扁桃をマッサージして、体温の上昇、白血球の増加、尿蛋白の変化などが起こるかどうかを調べる扁桃誘発試験があります。ただ、検査結果が陰性であっても、扁桃摘出により疾患が改善することがあるので、判断に注意が必要です。
治療の方法
治療は、病巣感染の原因となっている口蓋扁桃を摘出(コラム)します。手術により、掌蹠膿胞症では皮診の改善、消失が80%以上、胸肋鎖骨過形成症では疼痛改善が81%、IgA腎症では尿蛋白の改善が50%以上にみられます。
扁桃摘出術
扁桃摘出術、アデノイド切除術は、耳鼻科で最も多く行われる基本的な手術です。手術の難易度としては高くありませんが、口の深いところでの操作を必要とし、術後の出血を起こさないように止血操作を十分行う必要があります。
この手術を受ける人は子どもが多く、気道を直接に触る手術であり、術後出血のことを考えるとその頻度は少ないとはいえ、耳鼻科医としては神経を使う手術です。
通常は全身麻酔で行うので、準備段階での点滴が痛いくらいで、手術自体は痛みを感じません。患者さんが10歳以上で、患者さんの納得が得られれば、局所麻酔でも十分に行える手術です。
全身麻酔では、手術台にあお向けに寝て、頭を少し下げた状態で、口を広くあけ、ヘッドライトで口のなかをのぞきながら手術します。手術時間は、麻酔の時間を含めて1〜2時間程度です。最近では、高周波や超音波メス、吸引凝固装置などの最新の器械により、より痛みの少ない手術が行われるようになっています。
手術の危険性としては、麻酔合併症が1万件に1件程度(秋田大学麻酔科統計)、手術後1〜6時間以内と5〜7日目に出血の起こることが1〜3%あるといわれています。
入院期間は手術後3〜7日程度です。食事は本人次第ですが、手術後4時間以上経過すれば、水分やプリンなどをとることは可能です。
手術に要する費用は病院、入院日数によっても変わりますが、3割負担で約10〜15万円程度が目安です。