運動器系の病気(外傷を含む)

痙性斜頸

けいせいしゃけい
Spasmodic torticollis

分類:運動器系の病気(外傷を含む) > 脊椎・脊髄の病気

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どんな病気か

 痙性斜頸とは首周囲の筋肉、とくに前面を斜めに走る胸鎖乳突筋や、上肢と体幹を連絡する僧帽筋の異常な緊張亢進によって引き起こされる病気で、首が左右上下のいずれかに傾く、ねじれる、震えるといった不随意運動と姿勢異常を引き起こす状態をいいます。頸部ジストニアや攣縮性斜頸と呼ばれることもあります。

 発症年齢は10代から初老期までと広く、30〜40代にピークがあります。

原因は何か

 中枢神経や末梢神経の病気のひとつの症状として発症する場合があります。特定の動作や環境によって痙性斜頸が発生・増悪したり、特定の感覚刺激により消失・軽快する場合があり、中枢神経の運動プログラムの異常(特定の姿勢がスイッチとなり不随意運動が出現してしまう)によって発症すると推測されていますが、はっきりした原因はわかっていません。

 器質的な病気がない場合でも、精神的な要素の関与により発症することがあるとされています。一部の薬剤が誘引となる場合もあります。

症状の現れ方

 症状は一般的に、徐々に増悪してくる場合が多いといわれています。

 基本的な不随意運動や異常姿勢は、頸部の左右へのねじれが多く、いくつかの頸部の動きが複合した異常姿勢を示します。

 精神的ストレスや歩行、発語などにより増強することが多く、睡眠中は消失し、手を顔の向く側の頬にあてたりする動作で改善することもあります。不随意運動時に頸部の疼痛や頭痛を伴う場合も多くみられます。

検査と診断

 前記のような症状があれば診断されますが、心因反応やヒステリー、眼性斜頸との鑑別診断が必要となります。この病気に固有の診断法はとくにありませんが、筋電図検査や超音波検査を補助的に行う場合があります。

治療の方法

 治療は、精神安定薬や筋弛緩薬などの薬物療法やボツリヌス毒素療法、精神療法が行われますが、原因がはっきりしていないために治療効果は一様ではありません。

 症状が消失する場合は20〜30%と少ない報告が多いですが、ほかの部位にまで広がることはまれで、症状が固定されていくことが多いといわれています。薬物療法に効果がなく器質的な病変がある場合は、手術的治療が行われることがあります。

病気に気づいたらどうする

 前記のような症状に気づいた場合、さまざまな原因が考えられるため、その区別のためにまず神経内科を受診することをすすめます。

(大阪市立大学医学部附属病院整形外科病院講師 豊田宏光)