運動器系の病気(外傷を含む)
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関節リウマチ
かんせつりうまち
Rheumatoid arthritis
初診に適した診療科目:整形外科 リウマチ科
分類:運動器系の病気(外傷を含む) > 骨と関節の炎症、感染
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どんな病気か
「リウマチ」とは、もともとギリシア語の「流れる」という意味をもつ言葉で、筋肉や関節に痛みと炎症を引き起こす病気の毒素が、体のあちこちに流れていって引き起こされると考えられていたために名づけられたものです。
現在「リウマチ」という言葉は、広い意味で「リウマチ性疾患」を指している場合と、狭い意味で「関節リウマチ」を指している場合とに使われています。
「リウマチ性疾患」とは、関節、筋肉、骨、靭帯などの運動器に痛みとこわばりを起こす疾患で、これには変形性関節症、膠原病、痛風などたくさんの病気があります。ここでは、狭い意味での「リウマチ」つまり「関節リウマチ」について説明します。
関節リウマチは、関節の内面をおおっている滑膜という膜に炎症が起こり、進行すると軟骨・骨が壊れていく病気です(図63)。この病気にかかるのは主に女性で、男性の約3~4倍くらいで、40~50代で最も多く発症します。地域差はありますが、だいたい人口の0.2~0.5%くらいの患者さんがいるといわれています。
原因は何か
残念ながらまだ不明というのが現状ですが、この病気にかかりやすい遺伝的な素質があって、何らかの環境因子が引き金となって発症すると考えられています。その環境因子の中では、喫煙や歯周病が関節リウマチの発症や症状の悪化に関係しているということが最近の報告で明らかとなっています。ただ、病気になる素質はある程度遺伝しますが、実際に病気が遺伝する確率は非常に低いと考えてよいと思います。
この病気のはじまりは、免疫の異常で起こるといわれています。免疫とは、本来は細菌やウイルスなどの外敵を排除するシステムですが、この異常によって自分の体の一部を外敵と錯覚して排除しようとしてしまうわけです。この免疫の異常が滑膜炎を引き起こし、関節を壊していくわけですが、その中心的な役割を演じているのが、サイトカインという物質であることが最近の研究でわかってきました。
サイトカインとは、もともと免疫に関わる物質で、異物を排除して体を守るはたらきをしていますが、関節リウマチではある種のサイトカイン(TNF-αやIL-6など)が異常に増えて、関節の痛みやはれを引き起こしたり、骨・軟骨を壊したりしています。
症状の現れ方
関節リウマチの主な症状は、朝のこわばりと関節の痛み・はれ(関節炎)です。発熱、全身倦怠感、体重減少、食欲不振といった全身症状を伴うこともあります。
朝のこわばりは、朝起きた時、何となく手の指が硬くて曲げにくい、手の指がはれぼったい感じがするという症状で、同じような症状が足の指や四肢全体にみられることもあります。この症状は、更年期の人や他の病気でも軽度ならみられることもありますが、関節リウマチでは、通常30分以上から数時間と炎症の度合いに応じて長時間続くことが特徴です。
関節炎は、最初は手首や指の関節に起こる傾向があります。指の付け根とその次にある関節によく起こり、一番先端の関節にはあまりみられません。逆に、一番先端の関節だけに痛みやはれがある場合は、ほとんどが変形性関節症(ヘバーデン結節)です。
進行すれば大きな関節に及び、背骨やあごを含むほぼ全身の関節に現れることもあります。また、両側の関節に対称的に出てくるのも特徴です。
関節炎が長期間続くと、軟骨・骨が少しずつ壊れていき、関節に変形や拘縮(関節の動きが悪くなる)がみられてきます。こうなると日常生活が制限されることとなり、重症の場合は寝たきりになることもあります。
また、関節以外の合併症が現れることもあります。たとえば、肘、後頭部に出現する皮下結節(リウマチ結節)、涙や唾液が少なくなるシェーグレン症候群、肺線維症や肋膜炎などの肺疾患、アミロイドーシス、末梢神経炎、眼の上強膜炎、貧血、骨粗鬆症などです。定期的に診察を受け、これらの疾患に対しても早期に診断して対処することが重要です。
検査と診断
関節リウマチでは、発病して2年以内の早期に軟骨・骨が壊れていくといわれています。いったん傷んだ関節を元にもどすことはほとんど不可能なので、軟骨・骨が傷む前の関節炎の段階で、なるべく早く診断して治療することが大切です。
ただ、関節に痛みが出る病気は関節リウマチ以外にもたくさんあり、関節リウマチであっても早い時期にはなかなか診断がつかない場合もよくあります。リウマトイド因子という血液検査も、患者さんの80~90%で陽性となりよく行われますが、関節リウマチ以外の人や健康な人でも陽性となることもあり、これだけでは確定診断はできません。最近、抗CCP抗体という検査が可能となって、これが陽性に出れば、80~90%の確率で関節リウマチと診断できるといわれています。また、超音波検査やMRIでは、一般的な診察やX線検査ではみられないリウマチの変化がみられることがあります。
最近の関節リウマチの早期診断は、欧州リウマチ学会の「関節リウマチ分類基準」(2010年)に基づいて行われています。まず、1カ所以上の関節のはれがあり、はれまたは痛みがある関節の数、血液検査(リウマトイド因子、抗CCP抗体)、関節炎の持続期間、炎症反応(CRP、血沈)を組み合わせることによって関節リウマチと診断されます。
関節リウマチと診断されれば、関節炎の状態、薬の効果、薬の副作用や合併症のチェックのための血液検査を行います。関節炎の状態は、赤血球沈降速度、C反応性蛋白(CRP)、MMP-3などで判定します。また、X線検査や超音波検査、MRIなどによる画像検査で関節炎や関節破壊の状態を把握します。
治療の方法
治療の原則は、①薬物療法、②リハビリテーション、③手術療法、④ケアの四本柱を、患者さんの病気の重症度や日常生活での不自由度などを総合的に判断して行うことです。
薬物療法では、消炎鎮痛薬、ステロイド薬、抗リウマチ薬を患者さんの病気の状態に応じて使っていきます。抗リウマチ薬はその中心となるもので、発症早期(3カ月以内)に開始することが推奨されており、特にメトトレキサートは国際的な標準的治療薬として使用されています。ただ、人により効果も違い、またいろいろな副作用もあるため、その人にあった薬の種類や用量を決めていく必要があります。服用している薬の効果やその副作用について十分に説明を受け、自分でも注意することが大事です。ステロイド薬は炎症を抑える効果が大きく、炎症がコントロールできない場合に使うことがあります。ただ、長期に使用すると感染症や骨粗鬆症などの副作用が出現するために、なるべく短期間に減量・中止する必要があります。
最近、新しい抗リウマチ薬である生物学的製剤が使用できるようになり、関節リウマチの治療が格段に向上しました。生物学的製剤には、TNF-αやIL-6などのサイトカインのはたらきを妨げる薬や、免疫を司るT細胞のはたらきを抑える薬があります。点滴注射や皮下注射(自己注射も可能)で使用しますが、投与方法や投与間隔は薬の種類によって異なります。最近さらに、毎日服用する飲み薬で、JAK(ジャック)阻害薬という薬が使用可能となりました。これは、細胞の中でサイトカインによる信号の伝達をブロックすることで炎症や関節の破壊を抑える効果があり、生物学的製剤とほぼ同等の効果があるといわれています。
これらの薬は、抗リウマチ薬で効果が不十分であった患者さんに使われますが、効果は非常に強力で、患者さんの70~80%に効果があるといわれています。また、早期から効果的に使えば、ほとんどリウマチが治った状態:寛解(痛み・はれがない、血液検査正常、X線検査で進行なし)を維持することも可能です。ただ、この薬が免疫機能を抑えることになるため、感染症やその他の副作用に対する注意が必要であることや、値段が高いことなどの問題点もあります。
関節リウマチの薬物治療の原則は、現在ある関節の痛みやはれを抑えるだけでなく、将来起こりうる関節の破壊や変形の進行を予防して予後を改善することにあります。そのためには、リウマチが非常に軽いかほとんどない状態を目指して、3カ月か少なくとも6カ月以内には治療効果を見直して必要なら変更することが重要です。
関節の機能(関節の動く範囲と筋力)を保つためにリハビリテーションも必要で、そのための「リウマチ体操」というプログラムもあります。また、変形の予防や関節保護のためには、装具が必要です。頸椎のソフトカラー(頸部固定帯)や足底板、そのほかさまざまな自助具があります。
手術は、薬物療法とリハビリテーションによる治療にもかかわらず関節の障害が残り、手術により関節の機能や日常生活の改善が期待できる場合に行われます。具体的には、人工関節置換術、滑膜切除術、手指の腱断裂の手術、足趾の手術、頸椎の固定術などが行われています。特に人工股関節や人工膝関節は多くの場合、痛みのため歩行できなかった人でもほとんど普通に歩行できるようになります。ただ、リウマチの患者さんはたくさんの関節に障害があり、また内臓の病気を合併している場合もあるため、手術する時には慎重に決定するべきです。
病気に気づいたらどうする
整形外科やリウマチ科を「関節リウマチの疑い」で受診される患者さんで、本当に関節リウマチと診断される人はそれほど多くはありませんが、やはり朝のこわばりや両方の指の痛み・はれに気づいたら、なるべく早く専門医に相談したほうがよいでしょう。
関節リウマチは、原因不明の病気で、完全に治すことが難しいことには今も変わりがありません。しかしながら、最近のリウマチの治療は以前とは比べ物にならないほどに進歩しています。大多数の患者さんは日常生活もあまり支障なく過ごされており、手術を必要とする患者さんも少しずつですが、減ってきているといわれています。もし関節リウマチと診断されてもあまり悲観的に考えずに、病気のことや最新の治療法についての情報を得て、積極的に取り組んでいく心構えが大切です。
関連項目