女性の病気と妊娠・出産

性器ヘルペス症

せいきへるぺすしょう
Herpes progenitalis

初診に適した診療科目:産婦人科 皮膚科 婦人科

分類:女性の病気と妊娠・出産 > 外陰と腟の病気

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どんな病気か

 単純ヘルペスウイルス(HSV)が、おもに性行為によって性器へ感染して起こる病気で、急性型(初発型)、再発型があります。

 HSVには1型と2型があることが知られています。1型は一般に口や眼などの上半身に感染することが多く、2型は性器など下半身に感染することが多いとされています。

症状の現れ方

 急性型(初発型)か、再発型かで大きく異なります。

●急性型(初発型)

 HSVの初めての感染によって、外陰部に水疱ができたり、潰瘍ができたりするために症状が出現します。性行為などの感染の機会があってから、多くは1週間以内に強い外陰部(女性性器の外側の部分)の痛みを主症状として発症します。痛みが出る前に、外陰部のかゆみや違和感を感じることもよくあります。

 しばしば発熱や倦怠感などの全身症状を伴い、強い痛みのために歩行や排尿が難しくなって入院が必要になることもあります。鼠径部(太ももの付け根)のリンパ節が痛みを伴ってはれることも大部分の人で認められます。

●再発型

 HSVは、いったん感染すると完全には排除されずに神経節に潜んでいます。これが、心身の疲労や月経などをきっかけに再び活性化すると、神経を通って粘膜や皮膚に現れて病変を起こすことがあります。

 再発型の症状は比較的軽く、小さい潰瘍やいくつか集まった小さな水疱ができます。発熱などの全身症状や、リンパ節のはれなどは伴わないことがほとんどです。多くは1週間以内に治ります。

検査と診断

 外陰部の浅い潰瘍または水疱が診断のポイントになります。病変は、とくに急性型では大陰唇の内側と小陰唇に左右対称にできることが多いのも特徴です。

 病変部から採取した細胞に多核の巨細胞を認めたり、HSV抗原を検出する補助診断法が有力ですが、感度が低いことが難点です。HSVに対する抗体は、初感染では急性期には陰性で、2〜3週間後に陽性になります。再発型の場合はほとんど変化しません。

 区別すべき病気には、外陰部に潰瘍ができる梅毒、急性外陰潰瘍、外陰がんなどがあります。

治療の方法

 性器ヘルペス症の治療には抗ウイルス薬が用いられます。内服薬や注射薬、軟膏がありますが、急性型には内服の抗ウイルス薬であるアシクロビルやバラシクロビルが第一に選択されます。

 このような抗ウイルス薬を投与しても、再発は、無治療で治ってしまった場合と同じように起こります。再発した場合は病変も小さいので、軟膏による治療で多くの場合は十分です。経口薬による治療も行われますが、再発後少なくとも2日以内に治療を開始しないと有効でないといわれています。

病気に気づいたらどうする

 急性型の場合には症状が急激に現れるため、前述のような症状があったら婦人科への受診をすすめます。再発型で症状が軽い場合でも、性行為感染症なので、治るまでは性行為はひかえなければなりません。

 妊娠と性器ヘルペス症の関係についてはコラムを参照してください。

関連項目

 急性外陰潰瘍梅毒外陰がん

(がん・感染症センター都立駒込病院婦人科医長 八杉利治)

妊娠と性器ヘルペス症

 妊娠中に性器ヘルペス症が発症しても、それが胎児に及ぼす影響はありません。しかし、分娩時に母体が性器ヘルペス症にかかっていると、産道で胎児が単純ヘルペスウイルス(HSV)に感染し、新生児ヘルペスを発症します。

 性器ヘルペス症が初感染である場合には約50%、再発でも数%の新生児ヘルペスが発症するといわれています。初感染の性器ヘルペス症で新生児ヘルペスの発生が多いのは、母体のHSVに対する抗体がないことが関係しているのではないかと推測されています。

 新生児ヘルペスは死亡率が高い病気なので、分娩時にヘルペス性病変が外陰部や腟にみられる時は、帝王切開を行って分娩時の感染を防ごうとすることが一般的です。

 最近では、ヘルペスに対する抗ウイルス薬であるアシクロビルの胎児への影響が少ないことがわかってきて、妊娠中でも積極的にアシクロビルの投与を行い、帝王切開を避けようとする意見もあります。

(がん・感染症センター都立駒込病院婦人科医長 八杉利治)