治療は「断酒一択」から「減酒」の選択肢も─アルコール依存症

治療は「断酒一択」から「減酒」の選択肢も─アルコール依存症

治療は「断酒一択」から「減酒」の選択肢も─アルコール依存症

2022.08.19

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アルコール依存症の患者数は100万人以上と推定されていますが、治療を受けている人は1割にも満たないのが現状です。かつては「断酒」が唯一の治療法でしたが、近年は「減酒」という選択肢も検討されるようになりました。アルコール依存症予備群の人も含め、早期に適切な治療を受けることが勧められます。

外見でわからなくても実は依存症の人も

アルコール依存症は、自分の意思で飲酒をコントロールできず、生活になんらかの支障をきたしている状態で、脳の病気の1つです。一般的には、昼間から酔いつぶれ、仕事も失い、生活が破綻している人物像をイメージしがちですが、外見上は普通に社会生活を送っているように見えても、実はアルコール依存症かその予備群になっているという人も少なくありません。

コロナ禍で飲酒による問題を抱える人が増加中

そもそも、なぜアルコール依存症になってしまうのでしょうか。多くの人が最初はお酒自体を楽しむために飲みます。脳はお酒によってもたらされる快楽を覚え、また飲みたくなります。

そうして飲酒が習慣化すると、体に耐性ができて同じ量では快楽を得られなくなり、飲酒量はどんどん増えていきます。この段階になるとコントロールが難しくなり、多量飲酒が習慣化し、本格的なアルコール依存症となります。

近年のコロナ禍により、飲酒による問題を抱える人が増えています。これは、将来への不安や外出自粛によるストレスの増加、家飲みの機会が増えたことなどが、飲酒量増加につながっているためと考えられます。

減酒による健康被害のリスクを減らすことが重要

アルコール依存症と診断される前の段階でも、飲酒量が増加すれば、確実に心身に悪影響を及ぼします。その状態を放置すれば、やがてアルコール依存症へと進行し、コントロールはますます難しくなります。そのため、適量を超える飲酒が習慣化している場合は、少しでも早く治療を始めることが重要です。

アルコール依存症を治療するには、原則、断酒が必要となりますが、この「断酒一択」という従来の治療方針が受診率低下につながっていることが大きな課題でした。

こうしたことから、近年は「まったく治療しないより、少しでも飲酒量を減らし、健康被害のリスクを減らすことが重要」との考えから、「減酒」という治療法が検討されるようになりました。減酒は断酒よりも挫折しにくく、減酒治療をつづけるうちに最終的に断酒できるようになる人もいるとの報告もあります。

アルコール依存症にならないために、まずは自身の飲酒習慣を見直してみましょう。

(家庭の医学大全科ウェブサイト 編集部)