外傷

脊椎損傷

せきついそんしょう
Spinal injury

初診に適した診療科目:整形外科 外科 麻酔科

分類:外傷 > 頸部外傷

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どんな外傷か

 脊椎は文字どおり人間の体を支える骨(バックボーン)で、脊柱管という管のなかを脊髄という大切な神経の束がとおっている重要な部分です(図6)。脊椎は7個の頸椎、12個の胸椎、5個の腰椎および5個の仙椎が癒合した仙骨で構成されています(図4図5)。

 脊椎損傷とは、脊椎に過大な外力が加わって、骨折や脱臼を生じる外傷です。脊柱管のなかを脊髄がとおっているので、40〜60%は脊髄も損なわれるといわれています。脊椎損傷は骨の損傷で、脊髄損傷は脊髄の損傷なので、両者を混同しないことが大切です。

 脊椎損傷が起こりやすい部位は、胸腰移行部(第11胸椎〜第1腰椎)が50〜60%、次いで中下位頸椎(第3〜7頸椎)が20〜30%です。そのほか、上位頸椎(第1〜2頸椎)、胸椎(第1〜10胸椎)、腰椎(第2腰椎以下)、仙椎の損傷があります。

原因は何か

 青壮年の男性に多く、受傷原因としては、交通事故、高所からの転落、転倒、スポーツによるものなどです。スポーツでは水泳の飛び込み、スキー、ラグビー、グライダーなどで、若年者に目立ちます。とくに、水泳の飛び込みでは頸椎・頸髄損傷を起こしやすく、社会的にも問題になっています。

 また、骨粗鬆症のある高齢者では、尻もちをつくなどのごく軽微な外傷によっても簡単に胸腰移行部の圧迫骨折を生じることがあるので注意を要します。小児の頸椎損傷はほとんどが上位頸椎損傷です。

症状の現れ方

 上位頸椎損傷では頸部痛、後頭部痛のほか、頭を両手で支える動作をとることもあります。上位頸椎は呼吸をつかさどる神経の中枢がある場所ですが、脊柱管(前述)が広いために神経麻痺はあっても軽いことが多いといわれています。ただし、重度の損傷では四肢麻痺や致命的なものもあります。

 中下位頸椎損傷では頸部痛、頸部の運動制限や運動時痛が起こります。この部位では脊柱管が狭いために高率に脊髄損傷がみられ、四肢麻痺を生じます。また、脊髄は損なわれない場合でも神経根が損なわれると、上肢の疼痛、しびれ、筋力の低下がみられます。

 胸・腰椎の脱臼・骨折では、しばしば神経の損傷を合併するため、腰背部痛に加え、両下肢の運動、知覚麻痺を生じます。また、排尿・排便障害を来すこともあります。骨粗鬆症を伴う高齢者の胸・腰椎圧迫骨折では下肢の麻痺が起こることは少ないのですが、しばらくたってから麻痺症状が現れることもあるので注意が必要です。

検査と診断

①問診、診察

 どのような機転で受傷したかを問診したあと、局所の症状をチェックします。すなわち痛みの部位、圧痛、棘突起の叩打痛(ハンマーで叩いた時の痛み)の有無などです。頸椎損傷では、顔面や頭部の皮膚の傷からどのように受傷したか推定することができます。いずれの部位の脊椎損傷の場合でも、神経学的な検査を必ず行います。神経学的所見としては四肢腱反射、筋力検査、知覚検査などの神経学的検査を行い、脊髄・馬尾や神経根の損傷による麻痺の有無、程度を念入りにチェックします。

②検査

 画像検査が中心になります。まず単純X線撮影を行い、必要に応じて、CT、MRI(磁気共鳴映像法)などを行います。CTは単純X線写真では不鮮明な骨折線を映し出すことが可能です。またCTは脱臼や骨折を立体的に映し出すことが可能で、脊椎損傷の診断には極めて有効です。運動や知覚麻痺があり、脊髄・馬尾が損なわれている疑いのある場合にはMRIが不可欠です。

治療の方法

 頸椎損傷では、まず首を砂嚢や装具で固定し、絶対安静をとります。また、脊髄損傷を合併している場合は、四肢麻痺に加えて呼吸麻痺を起こしている場合があり、気管内挿管(気管にチューブを入れること)や気管切開による呼吸管理が必要です。

 上位頸椎損傷に対しては、保存的な治療が第一選択になります。中下位頸椎損傷でも安定型の骨折(圧迫骨折、椎弓骨折、棘突起骨折)で脊髄損傷を伴っていなければ、まず安静をとったのち、装具をつけて離床します。脱臼やずれのある骨折に対しては、頭蓋骨にピンを刺し、牽引することにより整復を行います。その後、頸椎を固定する装具を1〜2カ月間装着します(図7)。

 中下位頸椎損傷で、脱臼や骨折が整復されない場合や、脊髄損傷を伴う場合には手術が行われます(図8)。手術の目的は、脱臼、骨折に対する整復操作、圧迫された脊髄の除圧、不安定な脊柱の再建です。

 胸椎、および胸・腰椎損傷では強い外力によることが多いため、血気胸や腹部臓器の損傷を合併することが多いので注意が必要です。脊髄の麻痺を伴わない圧迫骨折では、安静、臥床のあと、装具(硬性コルセットなど)をつけて離床します。脱臼骨折では手術で整復、固定を行い、粉砕(破裂)骨折では脊柱管内に飛び出た骨片を除去して、固定します(図9図10図11)。

 胸髄損傷では完全麻痺の場合が多く、手術によっても回復する可能性はほとんどありませんが、早期にリハビリを開始することなどの目的で手術を行う場合もあります。

応急処置はどうするか

 どの部位の脊椎損傷でも、まず患部を固定し、安静をとることが応急処置の基本です。

 受傷現場から移動する場合、必ず頭部と体幹を一体として扱うことが大切です。これは不適切に患者さんを移送することによる二次的な脊髄損傷を予防するためで、マジックベッドなどを使うのがよいでしょう。

 受診科目は整形外科ですが、頸椎損傷で脊髄損傷を合併していて呼吸状態が悪い場合には、麻酔科の専門医がいる医療機関に搬送することもあります。胸・腰椎の損傷では、胸部や腹部臓器の損傷を合併する場合があるので、外科医の診察も必要です。

(防衛医科大学校整形外科学准教授 朝妻孝仁)

図4 頸部の解剖図(後方) 図4 頸部の解剖図(後方)

図5 頸部の解剖図(側面) 図5 頸部の解剖図(側面)

図6 頸部の解剖図(横断図) 図6 頸部の解剖図(横断図)

図7 頸椎固定装具(ハローベスト) 図7 頸椎固定装具(ハローベスト)

図8 第6〜7頸椎の脱臼骨折 図8 第6〜7頸椎の脱臼骨折

図9 第2腰椎の粉砕骨折 図9 第2腰椎の粉砕骨折

図10 第2腰椎粉砕骨折のCT像 図10 第2腰椎粉砕骨折のCT像

図11 第1〜3腰椎固定術 図11 第1〜3腰椎固定術