外傷
頭蓋骨陥没骨折
ずがいこつかんぼつこっせつ
Depressed skull fracture
初診に適した診療科目:脳神経外科 外科
分類:外傷 > 頭部外傷
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どんな外傷か
ちょうどピンポン球を押した時にへこんでしまったような、頭蓋骨が内側に陥没した骨折です。頭蓋骨線状骨折と同じく、骨折に伴う頭蓋内(頭蓋骨よりも内側)の損傷の有無が問題になります。
さらに、頭蓋骨陥没骨折では頭蓋骨の内側にはすぐに髄膜(コラム頭部の解剖図)に包まれた脳があるので、陥没の程度に応じて脳が圧迫・損傷を受けます。
原因は何か
頭蓋骨線状骨折と同じく、骨折部位への直接の衝撃が原因です。頭蓋骨が軟らかい乳幼児のほうが起こりやすいとされています。成人でも、野球の硬球が直撃したような外力の加わり方(小範囲に限られた鈍的外力)でみられます。
症状の現れ方
骨折部位に、打撲による疼痛、腫脹(こぶ)のほか、陥没骨折により圧迫・損傷を受けた脳の部位に応じた症状が現れることがあります。現れやすい症状は、半身の麻痺(片麻痺)、半身の感覚障害、言語障害、けいれん発作などです。
そのほか、陥没による圧迫のため、頭蓋骨の内側の圧が高まり(頭蓋内圧亢進)、激しい頭痛、嘔吐、意識障害などが認められることもあります。腫脹のため、頭蓋骨の陥没を触れることはほとんどありません。
検査と診断
頭蓋骨単純X線で診断できますが、頭蓋骨の陥没の状態と頭蓋内損傷の有無を診断するために、頭部CTが行われます。
治療の方法
内側に陥没した頭蓋骨が、脳に圧迫・損傷を与えて障害を及ぼしている場合には、陥没骨折整復術が行われます。手術の必要性は一般に陥没の程度に比例し、日本のガイドラインでは以下を手術適応の目安にしています。
①1㎝以上の陥没や、高度の脳損傷を伴う場合
②前額部など美容上問題になる場合
③硬膜の静脈(静脈洞)を圧迫する場合
④陥没骨折の直上に開放創(頭蓋骨に達する傷)があり、脳脊髄液の漏出など硬膜の損傷が疑われる場合
予後は合併する頭蓋内損傷の程度によって決まります。
頭部の解剖図
頭部の基本的な構造は、脳が頭蓋骨という入れ物に入っている状態といえます(図2)。頭蓋骨よりも外側を頭蓋外といい、頭部軟部組織がおおっています。頭蓋骨よりも内側を頭蓋内といい、脳が髄膜に包まれた状態で存在します。脳に対して影響を及ぼす頭蓋内の損傷の有無が、頭部外傷では問題になります。
髄膜は外側から硬膜、くも膜、軟膜の3層構造になっています。硬膜は頭蓋骨の内側にぴったりと張りついている、厚紙のようなしっかりした膜です。くも膜は薄く弱い膜で、ピンセットでつまむと破れてしまいます。軟膜は脳の表面そのもので、はがすことはできません。くも膜よりも内側を、無色透明の脳脊髄液が満たしています。