アレルギー疾患

昆虫アレルギー

こんちゅうあれるぎー
Insect allergy

初診に適した診療科目:皮膚科 アレルギー科 皮膚泌尿器科

分類:アレルギー疾患 > いろいろなアレルギー

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どんな病気か

 昆虫に刺されたり接触したりして何らかの症状が現れる場合には、たとえば蚊に刺された局所がかゆくなる場合のような直接的な作用によるものと、免疫グロブリンE(IgE)抗体を介したアレルギー機序(仕組み)によるものとがあります。後者を総称して昆虫アレルギーといいます。

 臨床的に重要なものとして、ハチなどの有刺昆虫による経皮性アレルギーによるものと、チョウやガなどの昆虫成分の吸入によるものとがあります。

原因は何か

 人を刺すハチではスズメバチ科のスズメバチ亜科とアシナガバチ亜科、そしてミツバチ科の3種が重要です。これらのハチ毒成分の組成は、各種のアミン、ペプチド、酵素を含む高分子蛋白質からなっていることが共通しています。スズメバチとアシナガバチでは、かなりの抗原共通性があることが知られています。

 アトピー素質のある人などがこれにさらされるうちに免疫グロブリンE(IgE)抗体が形成され、そのあとに刺されて十分量が体内に入ると、激烈な症状を示します。チョウやガなどの昆虫成分も同様で、反復吸入によってIgE抗体ができると考えられます。

症状の現れ方

 ハチ・アレルギーの場合、IgE抗体を介した即時型アレルギー反応によりアナフィラキシーショック様の症状が生じます。刺されて15分以内に全身のじんま疹、紅潮、血管浮腫、声門浮腫、気管支狭窄による呼吸困難、下痢、嘔吐、低血圧、意識消失、けいれんなどの症状が現れます。ハチ・アレルギーにより日本では年間30〜50人が命を落としています。

 チョウやガなどの昆虫成分の吸入では、アレルギー性鼻炎、気管支喘息症状などがみられます。

治療の方法

 ハチの刺傷によるアナフィラキシーの治療は、まず塩酸エピネフリンを皮下注射し、次いで血管確保をして副腎皮質ホルモン薬の静脈注射を行います。緊急処置用のアドレナリン(エピネフリン)の携帯用自己注射製剤(エピペン)があるので、ハチ・アレルギーの既往のある人はアレルギー科で専門医に相談するとよいでしょう。

 根本的治療にはアレルゲン免疫療法(減感作療法)が非常に有効率の高い治療で、全身反応の既往があり、皮膚反応やIgE抗体陽性の患者さんが適応になります。しかし、国内では健康保険の適応がなく、ごく一部の専門施設で行われている状況です。

 チョウやガなどの昆虫成分の吸入によるアレルギー性鼻炎、喘息症状に対しては、薬物による対症療法が行われることが多いのですが、対策としては原因を避けることが最善です。

病気に気づいたらどうする

 アレルギー内科、専門医を受診してください。

(埼玉医科大学呼吸器内科学/アレルギーセンター助教 山口剛史)