代謝異常で起こる病気

小児糖尿病

しょうにとうにょうびょう
Diabetes in children and adolescents

初診に適した診療科目:小児科 内科

分類:代謝異常で起こる病気 > 糖代謝の異常(糖尿病)

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どんな病気か

 小児期に発症した糖尿病のことです。糖尿病の病型分類(糖尿病の種類)には4つありますが、小児糖尿病にはこの4つの病型の糖尿病がすべてあります。今日では小児糖尿病といわず、1型糖尿病あるいは2型糖尿病などといいます。

 病型頻度は大人とは大きく異なります。10歳未満で発症する糖尿病は1型糖尿病がほとんどで、10代になると1型糖尿病は増加しますが、2型糖尿病も増えてきます。20歳以降になると、2型糖尿病がほとんどになります(図10図11)。

 小児糖尿病は、以前には1型糖尿病(昔はインスリン依存型糖尿病といわれていたものとほぼ同じ)とイコールのように思われていました。しかし、10代の子どもでも以前から2型糖尿病患者が日本には存在していました。最近は肥満小児の増加とともに肥満の2型糖尿病患者の増加が目立ちます。日本では大人の2型糖尿病の増加とともに、子どもの2型糖尿病も増えてきていると考えられます。

原因は何か

①1型糖尿病

 1型糖尿病の原因は子どもでも大人でも変わらず、膵臓のβ細胞の破壊によるインスリン分泌の絶対的な不足によります。β細胞の破壊原因には自己免疫機序(仕組み)とそれ以外のものが考えられます。

 それ以外の原因は、膵臓特異的自己抗体が発症時に検出されない場合です。これは、ある種のウイルス感染や牛乳哺育が原因であるように報告されたこともありますが、確定に至ってはいません。ウイルス感染が直接1型糖尿病を発症する(他人に感染するという意味)のではなく、感染後の免疫の過剰反応とか、ウイルスの蛋白質の一部を自己抗原と認識してしまうために、自己免疫機序によるβ細胞の破壊が起こると考えられています。

 最近、劇症タイプで発症する1型糖尿病が注目を集めていますが、この病型は子どもには極端に少ないものです。

②2型糖尿病

 子どもの2型糖尿病の原因は大人の2型糖尿病の発症原因と同じく、インスリンの分泌不全とインスリン抵抗性が考えられます。もともと日本人は欧米人に比べてやせ型で、農耕民族であるためにインスリンの分泌予備能力は欧米人にくらべて劣っています。この状態で高カロリー、高脂肪食をとっていると、血糖の上昇が起こりやすいと考えられます。

 一方、筋肉や脂肪組織など糖を消費する組織(末梢組織)におけるインスリン作用の劣化(インスリン抵抗性という)も2型糖尿病の原因となります。多くのエネルギーがなくても末梢組織の活動性を保つことができる体質になっていると考えられます。2つの機序とも遺伝的に制御されているので、2型糖尿病は親から子へ遺伝するといわれています。

症状の現れ方

 1型糖尿病の症状の現れ方は急激です。肥満していない子どもが急激にやせてくる、水をよく飲む、トイレが近くなった、夜尿が増えた、などの症状が多くみられます。

 2型糖尿病は、大人と同じく無症状です。そのため、学校検尿が毎年1回行われています。

 もちろん、肥満児が急激にやせてきて、2型糖尿病と診断される例もあります。この典型例が一般にペットボトル症候群といわれているもので、清涼飲料水ケトーシスとも呼ばれます。一度に大量の単糖類がとられた時、体内での糖代謝がうまくいかなくなり、一見1型糖尿病のように急激なケトアシドーシス(異常な高血糖と腹水と、対内にケトンが産生される状態で、何らかの意識障害を伴うことが多い)で発症してくるタイプです。

検査と診断

 一般の血液生化学検査、尿中ケトン体、胸部X線検査などのほかに、血糖、尿糖、HbA1Cなど糖尿病の診断に欠かせない検査をします。急激な発症の時は血液ガス分析、膵臓特異的自己抗体の検査(抗GAD抗体、IA‐2抗体、ICA)が必須となります。

 血糖値が落ち着いてから内因性インスリンの分泌能を調べます。

 合併症が発症していないかどうか(2型糖尿病の場合は、たとえ急激な発症であってもそれ以前に合併症が進んでいることがあるため)を調べるために、眼底や尿中アルブミンの検査をします。

治療の方法

①1型糖尿病の治療法

 インスリン製剤による治療を行います。インスリン製剤の種類は超速効型、速効型、中間型、混合型、持続型などがあり、注入器も詰め替えタイプ、使い捨てタイプなどいろいろあるので、自分の生活に合わせたインスリン製剤を選ぶことができます。

 小児期は、1日に混合型インスリンを2回注射し、必要に応じて速効型を注射することでほぼ対応できます。学童期になり学校で注射できるようになれば、速効型ないし超速効型の食前3回注射に、睡眠前の中間型1回注射というやり方が最も生活に合わせやすい方法です。昼食時に注射ができなければ、できるようになるまでの間、朝食時に混合型を使用していくこともできます。

 中学生以上になれば、速効型ないし超速効型の食前3回と、睡眠前の中間型ないし持続型溶解インスリン1回注射のやり方が、最も生活に合わせやすい方法となります。

 インスリン注射のやり方は、自分の生活に合った方法を主治医といっしょに考えていくことが最も大切です。インスリン注射の受け入れ、インスリン注射の効き方、食事内容と食事時間など個々に違いがあるので、無理のない方法を見つけて血糖コントロールを良好にしていくことが最も大事なこととなります。

②2型糖尿病の治療法

 食後高血糖だけの状態か否か、内因性インスリンの分泌能がまだ保持されているかいないか、または肥満しているかどうかで経口血糖降下薬の使い分けをします。

病気に気づいたらどうする

 糖尿病の症状に気づいたら、すぐ専門の医療機関(小児科・内科など)を受診してください。1型糖尿病の場合、ケトアシドーシスの状態から昏睡状態になることがあるので、早急に受診して、血糖値を測定してもらってください。

 2型糖尿病の場合は、気づいてからではすでに遅いことが多いので、学校での検尿を毎年必ず受けてください。

(東京女子医科大学病院糖尿病センター教授 内潟安子)

図10 30歳未満発見発症1型および2型糖尿病患者の発見発症年齢ごとの男女別人数図10 30歳未満発見発症1型および2型糖尿病患者の発見発症年齢ごとの男女別人数

図11 1型および2型糖尿病患者の年齢層別の比率図11 1型および2型糖尿病患者の年齢層別の比率