内分泌系とビタミンの病気

尿崩症

にょうほうしょう
Diabetes insipidus

初診に適した診療科目:脳神経外科 内科

分類:内分泌系とビタミンの病気 > 下垂体の病気

広告

広告

どんな病気か

 抗利尿ホルモンは下垂体後葉から放出されて、腎臓にはたらき、水の再吸収を行い、体内の水分調節をします。抗利尿ホルモンの分泌や作用が障害されると、この水の再吸収が行われず、尿として出てしまうために多尿となります。多尿により、のどが乾き、冷たい水を多量に欲します。

原因は何か

 抗利尿ホルモンの分泌または作用障害による中枢性と、腎臓でうまくはたらかない腎性とがあります。その原因は不明のものが多いとされています。中枢性の場合、脳腫瘍や外傷、手術後などに起こることもあります。下垂体炎によるものや、まれに遺伝子異常によるものも報告されています。

症状の現れ方

 多尿とそれによる多飲が主症状です。突然に発症し、強いのどの乾きがあります。尿量は1日3l以上となり、夜間でも減少しません。夜間の排尿回数が多くても、1回量が少ない夜間頻尿と区別する必要があります。本症では、比重や浸透圧が低い尿が出ます。

検査と診断

 血中の抗利尿ホルモンと血中、尿中の浸透圧を調べます。血中浸透圧は高く、尿中浸透圧は低いですが、血中抗利尿ホルモンは低値となります。また、摂取水分量を制限し、採尿と採血をして、浸透圧の変化を調べます。正常では尿の浸透圧が上昇(濃縮尿)しますが、尿崩症では上昇しません。

 さらに、抗利尿ホルモンを注射して、その効果を調べます。中枢性では尿量が減少しますが、腎性では変わりません。MRIでは、正常で認められる下垂体後葉の信号が失われています。糖尿病や腎臓病などの除外、精神的な原因による多飲多尿との区別が必要です。

治療の方法

 脳内の病変による場合は、原疾患の治療が重要です。多尿の治療には抗利尿ホルモン製剤を日に1〜2回、点鼻する方法が一般的です。その他、注射製剤も使用できます。

病気に気づいたらどうする

 抗利尿ホルモンの分泌障害によるのかどうか、またその原因は何かを調べるために検査が必要です。急に多尿になった場合、内分泌専門医を受診してください。頭部外傷や脳手術の既往歴がある人は脳外科に相談してください。

(弘前大学大学院医学研究科内分泌代謝内科学講師 蔭山和則)

(弘前大学大学院医学研究科内分泌代謝内科学教授 須田俊宏)