肝臓・胆嚢・膵臓の病気

アミロイド肝

あみろいどかん
Hepatic amyloidosis

初診に適した診療科目:消化器科 内科

分類:肝臓・胆嚢・膵臓の病気 > 肝臓の病気/その他

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どんな病気か

 肝臓に、アミロイド線維蛋白という異常な蛋白が沈着することにより肝障害が生じる病気で、通常は全身性アミロイドーシスの一部分症として発症します。沈着するアミロイド線維蛋白の種類や基礎疾患などにより、多くの分類がなされています(コラム)。

 肝臓に沈着を起こす異常蛋白であるアミロイドは、免疫グロブリン(ALアミロイドーシス)あるいは血清アミロイドA(AAアミロイドーシス)に由来します。ALアミロイドーシスでは25〜80%、AAアミロイドーシスでは15%程度、肝臓にアミロイドの沈着がみられます。

 また、続発性(AA)アミロイドーシスは関節リウマチなどを基礎疾患として発症します。

症状の現れ方

 アミロイド肝の臨床症状は乏しく、ほとんど無症状です。そのため、多くはネフローゼ症候群や心不全など他の臓器の症状で全身あるいは他臓器のアミロイドーシスが発見され、全身の精密検査を行うことによってアミロイド肝も診断されます。

 高頻度に肝腫大を起こすため、肝腫大で発見されることもあります。腫大した肝臓は、他の原因で腫大した肝臓に比べて非常に硬いことが特徴で、「岩のような硬さ」とも表現されます。そのわりに圧痛(押すと出る痛み)はありません。

検査と診断

 血液生化学検査では、多くは血清アルカリホスファターゼ値が軽度の高値を示します。黄疸がみられた場合は、進行性で予後不良です。画像診断では肝臓の腫大がみられますが、あまり特徴的な所見はありません。

 アミロイドーシスの診断には、まずアミロイドーシスを疑い、組織学的にアミロイド沈着を証明することが必須です。ただし、出血の危険性(5%程度)があることから、肝生検(組織をとって調べる)は積極的には行われていません。生検できた場合は、特殊な染色を行い、アミロイドの沈着を証明します。同時に、特異抗体を用いた免疫組織化学染色で、沈着しているアミロイドのタイプを決定します。

 鑑別診断としては、肝腫大を示すすべての肝疾患があげられますが、なかでも肝硬変、びまん性肝細胞がん、あるいはヘモクロマトーシスなどの代謝性肝疾患などを除外する必要があります。

治療の方法

 全身性アミロイドーシスの一部分症なので、一般には全身性アミロイドーシスとしての治療を行います。AAアミロイドーシスでは、新たなアミロイド産生を抑制するために、原因となる関節リウマチなどの基礎疾患を治療することが原則です。最近は、末梢血幹細胞移植(PBSCT)を用いた大量化学療法の有効性も報告されています。

 アミロイドは溶けにくい性質であるため、いったん沈着したアミロイドを除去することは非常に困難です。しかし、ジメチルスルホキシド(DMSO)という薬剤は、アミロイドを溶解する可能性が示唆されていて、内服や皮膚外用塗布として用いられています。黄疸の進行など、肝不全の徴候がある時は肝臓移植も行われています。

病気に気づいたらどうする

 アミロイド肝はほとんど無症状のため、多くはネフローゼ症候群や心不全など他臓器の症状で、全身あるいは他臓器のアミロイドーシスとして発見され、その後全身の精密検査を行ってアミロイド肝も診断されます。したがって、症状があり、肝臓の腫大に気づいたら、すぐに専門医に相談してください。

(国立病院機構長崎医療センター臨床研究センター長 石橋大海)

アミロイドーシス

アミロイドーシスの分類

 アミロイドと呼ばれる線維状の異常蛋白が体のなかに沈着して、個々の臓器の機能障害を起こす病気の総称です。全身性と非全身性、遺伝性と非遺伝性、あるいは原発性と続発性に大別されます。

 続発性アミロイドーシスは50代後半〜60代に発症年齢のピークがあり、関節リウマチ、骨髄腫、長期間の人工透析を受けている人に発生しやすい傾向があります。

 遺伝性アミロイドーシスは、とくに熊本県と長野県に患者さんが多くみられる地域があります。遺伝形式は常染色体優性で、親から子どもに50%の確率で病気が伝わり、20代後半から40代前半に発症します。

アミロイド前駆蛋白

 全身性アミロイドーシスの原因は単一ではありませんが、いずれの場合も血液中にアミロイドの基となる前駆蛋白が存在します。

 遺伝性全身性アミロイドーシスでは変異トランスサイレチンが、また骨髄腫に伴うアミロイドーシスや長期透析患者でみられるアミロイドーシスでは、それぞれ免疫グロブリンの短鎖とβ2ミクログロブリンがアミロイド前駆蛋白です。しかし、これらが組織にアミロイドとして沈着する機序(仕組み)の詳細は不明です。

症状と治療

 アミロイドーシスは特徴的な症状に乏しいため、診断が困難です。沈着が著しい臓器の障害症状が出ることになります。

 遺伝性全身性アミロイドーシスは、手足のしびれ、麻痺といった多発神経炎症状、高度な立ちくらみ、食欲不振、排尿障害などの自律神経症状が現れます。とくに、数日の周期で激しい便秘と下痢が繰り返し起こることが特徴的です。進行すると舌、甲状腺、肝臓などが硬くはれ、また心臓ならびに腎臓の機能が低下します。最終的には全身衰弱を来します。

 予後は極めて悪く、多くの患者さんは発病後数年で死亡します。体内へ沈着したアミロイドを取り去る根本的な治療法はなく、多くの場合は対症療法に終始します。

 原発性全身性(AL型)アミロイドーシスには、大量の化学療法が試みられています。

 また、最近は遺伝性アミロイドーシスに対して肝移植(日本では生体部分肝移植)が行われています。異常な蛋白を産生する患者さんの肝臓を、健康な人の肝臓に取り替えるというものです。この治療法により、アミロイドは患者さんの体内で産生されなくなります。

(国立病院機構長崎医療センター臨床研究センター長 石橋大海)