食道・胃・腸の病気

胃手術後の合併症

いしゅじゅつごのがっぺいしょう
Complications of gastric surgery

初診に適した診療科目:消化器科 内科 外科

分類:食道・胃・腸の病気 > 胃・十二指腸の病気

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どんな病気か

 胃手術後の合併症としては、大きく、①術後早期の合併症と、②術後晩期(退院後など)の合併症とに分類されます。術後早期の合併症は、肺炎、後出血、縫合不全、膵炎・膵液瘻、創感染などがあげられます。

 一方、術後晩期の合併症は、手術を受けて退院後、長期にわたり障害が残ります。種類としては、ダンピング症候群、輸入脚症候群・輸出脚症候群、吻合部潰瘍、貧血、逆流性食道炎、残胃がんなどがあげられます。

原因と症状の現れ方

①ダンピング症候群

 早期ダンピングでは、食後30分以内の発汗、頻脈、顔面紅潮、脱力感、腹部症状(下痢、腹痛、膨満感)などが現れます。原因は胃の食事貯留能の低下によって、食後急速に食事内容が小腸へ流入することによって起こるとされます。また晩期ダンピングでは、食後2〜3時間後に、全身脱力感、冷や汗、めまい、手指の震えなどが現れます。原因は、食後に食事内容が急速に小腸へ流入したために起こる高血糖と、それを是正するインスリン過分泌により、ある程度食後時間をへて低血糖症状が生じるためです。

②輸入脚症候群

 症状としては上腹部痛、腹部膨満、背部痛などがあります。胃切除後、再建腸管の輸入脚という部分に狭窄や閉塞があり、腸内容物が輸入脚内でうっ滞することが原因です。緑色の胆汁を含む大量の嘔吐が特徴です。完全に閉塞すると無胆汁性嘔吐となります。ほかに黄疸、貧血、発熱、頻脈を起こすことがあります。

③輸出脚症候群

 輸入脚症候群と同様に、再建腸管の輸出脚での狭窄や閉塞が原因になります。悪心、嘔吐、腹痛などが現れます。

④吻合部潰瘍

 切除胃と十二指腸や小腸を吻合した部分の周囲に潰瘍ができるため、空腹時の上腹部痛、胸やけ、悪心、嘔吐などの症状が現れます。出血を伴う場合は吐血や下血を認めることもあります。潰瘍になる原因は、残存胃酸分泌腺の機能過剰、再建部周囲血流障害などがあげられます。

⑤貧血

 次の2つのタイプがあります。

a.鉄欠乏性貧血。血球成分に必須の鉄分の吸収が酸分泌低下とともに低下するために起きます。

b.悪性貧血(ビタミンB12欠乏性貧血)。内因子と呼ばれるビタミンB12吸収に必須の物質が胃全摘により欠如して起こる貧血です。

 いずれの貧血の症状も、めまい、脱力感、倦怠感などがあります。

⑥逆流性食道炎

 症状としては、胸やけ、胸痛、消化液の逆流などがあげられます。原因は胃切除による胃噴門部の逆流防止機構(仕組み)の障害で、消化液(胃液や胆汁・小腸液)が食道に頻回に逆流することにより起こります。

⑦残胃がん

 胃が残る胃切除が施行された後、残った胃(残胃)に再度がんが発生する病態をいいます。切除断端や吻合部付近に発生することが多いです。発見された時には、すでに進行がんとなっていることが少なくありません。

検査と診断、治療の方法

①ダンピング症候群

 早期ダンピングでは、食事療法が有効です。高蛋白、高脂肪の食事にし、糖分摂取による血糖値の大きな変化を防ぎます。また、1回の食事量の減量、ゆっくりした食事、食後の休憩も効果的とされます。また晩期ダンピングでは、低血糖による発作の際に糖分(アメなど)を摂取することで症状が軽くなります。早期ダンピングに対するような食事療法も効果があります。

②輸入脚症候群・輸出脚症候群

 ともに消化液の貯留に対して減圧処置をすることで軽快することもありますが、難治性の際には手術が選択されます。

③吻合部潰瘍

 原因が胃酸による場合、制酸剤の投与で治癒に向かいます。一方、血流障害などさまざまな因子によって起こる難治性潰瘍では、手術となる場合もあります。

④貧血

 それぞれの貧血の種類によって、鉄剤やビタミンB12製剤が有効です。

⑤逆流性食道炎

 薬物療法が主となり、制酸剤、アルロイドG、蛋白分解阻害薬の内服(メシル酸カモスタット)などが有効とされます。薬物療法に抵抗する高度の逆流性食道炎に対しては、手術が選択されることもあります。

⑥残胃がん

 早期発見によって、胃切除を行わず内視鏡的粘膜切除術や他の内視鏡治療の選択も可能です。一方、進行がんに対しては、根治手術が第一選択となります。

病気に気づいたらどうする

 難治性の吻合部潰瘍や残胃がんでは、手術を含めた治療が必要になることもあります。いずれにしても、胃切除術後に定期的な検査や診察を受けることで、さまざまな術後合併症を早期に発見・治療することが重要です。

 胃切除術後の合併症は、その症状の起こるタイミングや特徴を詳しく相談する必要があります。症状の原因が特定できると、改善策や対処法が自然とわかってくることが多いのです。

(慶應義塾大学医学部一般・消化器外科講師 才川義朗)