耳の病気

補聴器

ほちょうき
Hearing aid

初診に適した診療科目:耳鼻咽喉科

分類:耳の病気 > 難聴のリハビリテーション

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どんなものか

 補聴器とは、難聴の人が音声を聞き取るために使用するもので、音声を増幅する機器です。あくまでも聴覚障害を補うための道具にすぎず、聞き取りそのものを正常にするものではありません。

なぜ補聴器で聞き取れるのか

 会話の媒介である音声は、さまざまな音波からなりますが、一定の大きさ(エネルギーの大小)と周波数(音の高低)をもっています。これを会話帯域(図22)といいます。

 大まかにいうと、大きさでは30〜80dB(デシベルという単位で、聴力レベルの単位と同じ。数が増えるほど大きい音)の範囲に分布しており、大きい音声(たとえば母音)もあれば小さい音声(子音など)もあります。聴力レベルが30dB以上では、普通の会話音が多少なりとも聞き取りにくくなり、聴力が悪くなるほど、補聴器が必要となります。

 この際、難聴者が聞き取れない音声を聞き取れるような大きさに増幅するのが補聴器です。しかし、ほとんど聴力が残っていない場合には、どんなに補聴器で音声を増幅しても聞き取ることはできません。

補聴器使用には調節が必要

 難聴の人でも補聴器で聞き取れるようになりますが、ただ音声を大きくすればするほどよいというわけではありません。大きすぎる音声は耳に不快感をもたらすのみならず、逆に聴覚神経を障害し、難聴の原因となります。このため、あまり大きい音声が入らないように調節する必要があります(最大音圧調節)。

 また、周波数が低い音(ブーという振動する感じの音)から高い音(金属音やキンキンとする音)の間で、難聴の程度に合わせて増幅を調節する必要があります(周波数特性調節)。とくに聞き取りをよくしたい場合には、高い周波数を増幅することが有効になります。

補聴器使用の注意点

 視覚(眼鏡)と違って、聴覚(補聴器)は微妙な調節が必要です。その訳は、聞き取りたい音声が一定ではないこと、環境雑音が場所や時間によって、極端な場合には瞬時に異なるという点です。

 最近のデジタル補聴器は、従来のアナログ式に比べ、音質処理などかなり性能はよくなってきました。しかし、視覚と違って、聴覚では慣れの問題があり、必ずしもすべてを満足させるものではありません。

 補聴器のリハビリテーションでは、実際に使用し「大きすぎる音はなかったか」「聞き取りにくいことはなかったか」など、1〜2週間ごとに数回、調節を繰り返す必要があります。そうした調節をへて、日常生活で最も聞き取りがよい状態で使用できるようになります。

 補聴器は現在500種類ほどあります。最近は軽度難聴者用のオープン型が増えています。しかし、実際に試すことができるのは数種類にすぎません。まったく実用的でない場合には、補聴器を換えて試聴することが必要になるので、病院や補聴器販売店のセカンドオピニオン(第二の診断)も忘れないでください。

 使用中に少しでも気になることがあれば、すぐ相談することも忘れないでください。

(東京医科大学耳鼻咽喉科/聴覚・人工内耳センター教授 河野 淳)

図22 会話帯域と難聴の分類図22 会話帯域と難聴の分類