耳の病気
内耳炎
ないじえん
Otitis interna
初診に適した診療科目:耳鼻咽喉科
分類:耳の病気 > 内耳の病気
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どんな病気か
内耳炎は、主に中耳腔の炎症が、中耳と内耳を隔てている2つの窓(正円窓と卵円窓)を通して内耳に及んだものです。しかし、時には真珠腫性中耳炎によって内耳の骨が破壊され、そこを通して中耳腔の炎症が内耳に及ぶものや、髄膜炎が原因で起こるものなど、他の経路から起こるものもあります。
原因は何か
中耳の炎症を起こす病気が原因になります。たとえば、急性中耳炎や慢性化膿性中耳炎、あるいは真珠腫性中耳炎がある時に内耳炎になりやすくなります。中耳の炎症が内耳に波及する時は、急激に波及することもあれば、徐々に波及していくこともあります。また、髄膜炎になった時に炎症が内耳に波及することもあります。
しかし、中耳に炎症があったり、髄膜炎になったりしたからといって、すべての人が内耳炎になるわけではありません。
症状の現れ方
内耳への炎症の及び方が急で、しかもその程度が強い場合には、激しい回転性のめまい、吐き気、嘔吐に加えてひどい難聴や耳鳴りが起こります。
内耳には、体のバランスをとるために不可欠な三半規管などの前庭器官と、音の感覚器官である蝸牛があります。これら内耳の機能が、強い炎症で障害を受けて急激に低下するため、これらの症状が起こるのです。
内耳への炎症の及び方が徐々に起こる場合には(慢性中耳炎に多い)、耳鳴りが起こったり、難聴が少しずつ進んだり、あるいは軽いめまいやふらふら感が起こるようになります。
検査と診断
難聴がある場合には聴力検査を、めまいがある場合には平衡機能検査を行います。平衡機能検査では自発眼振(コラム)が認められることが多く、また、温度眼振反応が低下したり、瘻孔症状(コラム)があったりすることもあります。耳のCTやMRIによる画像診断も有効です。
治療の方法
原因になっている中耳の炎症や髄膜炎と、それによって起きた内耳の炎症を治さなくてはなりません。急性の中耳の炎症や髄膜炎には抗生剤が使われますが、同時に内耳の機能低下にはビタミン剤や副腎皮質ステロイド薬などが併用されます。
慢性中耳炎がある場合には抗生剤も使われますが、慢性感染の原因である中耳炎を手術的に治す必要が出てきます(鼓室形成術)。
これらの治療によって中耳の炎症が治っても、しばしば内耳の機能障害(主に難聴)が残ることがあります。
病気に気づいたらどうする
急性中耳炎では耳が痛くなります。それに引き続いてめまいや強い難聴が起こったら、すぐに専門医を受診してください。
また、慢性中耳炎がある場合には長期にわたって放置せず、内耳に影響が出ないうちに専門医を受診してください。
めまいの検査
①眼振の検査
めまいがする時に、患者さんは天井などのまわりの景色がぐるぐる回っていると訴えます。この時、実際に天井が回っているのではなく、眼球のほうが回っているためそう見えるのです。この眼球の動きを眼振といいます。
眼振をよく観察するためには「フレンツェルの眼鏡」を使います。この眼鏡は強い凸レンズです。そのため、まわりのものがぼやけてよく見えず、視線を固定することができなくなります(非注視状態)。この状態では弱い、かすかな眼振も観察しやすくなります。
耳が原因の眼振の多くは水平性、あるいは水平回旋混合性の眼振です。この時、眼球はゆっくりと右あるいは左に動いたあと、急速に反対に動いて元の位置にもどります。この動きを繰り返しています。
一方、垂直性の眼振がみられる場合などは中枢性(脳、とくに小脳、脳幹)のめまいの特徴で、すぐにCTやMRIなどの検査が必要となります。このように眼振の詳しい観察は、めまいの原因を知るうえで非常に重要なものです。
②温度眼振検査
ヒトの外耳道に冷たい水や温かいお湯を入れると、内耳の三半規管が刺激されて眼振が起き、また、めまいが起こります。この眼振の続いている時間(正常では約2〜3分)や眼振の速度から、三半規管の機能がどのくらい保たれているかがわかります。
もし反応がまったくなければ、内耳(半規管)の機能をほとんど失っていると考えられます。前庭神経炎では、この反応が高度に低下します。メニエール病では初期のうちは正常のことが多いのですが、めまい発作を繰り返しているうちに、徐々にはたらきが落ちてきます。薬物などによる前庭機能高度低下例では、この反応が耳の両側とも高度に低下し、結果として常時ふらつきが起こることになります。
③瘻孔症状検査
耳を押さえたり、耳たぶを引っ張ると、めまいがすると訴える患者さんが時々います。このような患者さんの外耳道に陽圧や陰圧の刺激を与えると、めまいが起こり、眼振がみられます。このような症状を瘻孔症状といい、その有無を調べる検査を迷路瘻孔症状検査といいます。
慢性中耳炎、とくに真珠腫性中耳炎でよく起こりますが、鼓膜に穴があいていなくても、先天性梅毒、メニエール病、外リンパ瘻などでまれにみられることがあります。一般的には、「ポリツェルのゴム球」を外耳道に密着させ、ゴム球を圧迫して陽圧刺激を加え、次いで陥没したゴム球が元の形にもどることにより陰圧刺激を加えます。眼振の観察はフレンツェル眼鏡下で行ったり、電気眼振計に記録したりします。