眼の病気
仮面ぶどう膜炎(悪性腫瘍、とくに悪性リンパ腫)
かめんぶどうまくえん(あくせいしゅよう、とくにあくせいりんぱしゅ)
Masquerade syndromes (Malignant tumor, especially lymphoma)
初診に適した診療科目:眼科
分類:眼の病気 > ぶどう膜の病気
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どんな病気か
さまざまな眼内腫瘍により、あたかもぶどう膜炎のような眼内炎症を引き起こしている場合を指します。これが「仮面」といわれるゆえんです。本来のぶどう膜炎と異なり、炎症による症状でないため、ぶどう膜炎でよく治療に使用されるステロイド薬にはあまり反応しません。
原因不明のぶどう膜炎のなかで、ステロイド薬に反応があまりよくなく、長期に炎症が持続する場合には、腫瘍が原因となる「仮面ぶどう膜炎」である可能性があります。しかし、一般的な頻度としては、まれな病気と考えられます。
原因は何か
眼内腫瘍のなかでも、とくに成人の悪性リンパ腫、悪性黒色腫、小児の網膜芽細胞腫が多く、そのほかに白血病、他の臓器からの転移性の眼腫瘍が原因となる場合もあります。
たとえば悪性リンパ腫の場合、全身の悪性リンパ腫が眼内に転移してくる場合と、眼から生じてくる原発性の場合の2通りがあります。眼に発生する場合には、脳神経系にも生じていることもあります。この場合、脳神経系の症状が先に出てくる場合と、眼の症状が先に出てくる場合とがあります。
症状の現れ方
症状として、小児では斜視または瞳孔の赤色反射の喪失(白色瞳孔)、成人では飛蚊症(コラム)や視力低下が起こることがありますが、一般的に自覚症状は初期には軽いことが多いのが特徴です。
検査と診断
悪性黒色腫や網膜芽細胞腫の場合は、散瞳下の精密眼底検査でほぼ診断が可能です。しかし、悪性リンパ腫、白血病、その他の腫瘍の場合は、全身の検索とともに、硝子体手術などで得られる組織や細胞のサンプルを病理検査する必要があります。また、悪性リンパ腫では、脳神経系の病変の有無を調べるためにCTやMRIなどの検査を併用します。
これらの検査を行い、疑わしい場合は各専門の医師(血液内科、脳外科など)と連携し、確定診断に努めてゆきます。
治療の方法
診断がついた場合、原因となる腫瘍そのものに対する治療を行います。眼内悪性リンパ腫では放射線治療の効果が期待できます。近年では抗悪性腫瘍薬のメトトレキサートの硝子体内投与の効果が報告されています。他の部位からの転移性の悪性リンパ腫である場合は、化学療法が主になります。しかし、原発性の眼内悪性リンパ腫の予後は大変不良です。
血液内科、脳外科などの医師と眼科医との連携のもとに、治療することが重要です。
飛蚊症
飛蚊症はよくある症状で、心配になって眼科を受診する人もたくさんいます。しかし、大半はとくに病気とは関係がないものです。
普通の飛蚊症は、硝子体のにごりが網膜に投影されて見えるもので、大人では多かれ少なかれ誰でもあるといっていいものです。硝子体は透明な組織とされていますが、完全に透明というわけではないからです。年齢とともに、そして近視が強いほど、硝子体には繊維の塊のようなにごりが出やすくなります(図48‐a)。
飛蚊症は、晴れた空のように明るい背景、白っぽい背景でよく見えます。また、後部硝子体剥離が起こると、視神経乳頭の部分からはがれた厚くてリング状の後部硝子体皮質(ワイスリング)が飛蚊症の原因になります(図48‐b)。
この場合、輪状ないし楕円状の濃い影が視野の中心あたりを縦横に動きまわるので相当気になるようですが、これもとくに病気とはみなされません。「何とかしてほしい」という人もいますが、「どうにもなりません」といって納得してもらうしかありません。そのうち、あまり気にならなくなるものです。
飛蚊症を訴えて受診する人の大半が病的ではない、というのは眼科医が共通して抱いている認識です。しかし、時に飛蚊症は重大な病気のサインになります。
網膜剥離では、飛蚊症が前駆症状になることがめずらしくありません。硝子体の牽引に伴って網膜に裂孔ができる時、必ず網膜の血管は破綻して出血します。破綻する血管の太さや性質で量は違いますが、多かれ少なかれ出血が起こり、眼球の内部、硝子体腔へと拡散します。その出血が飛蚊症として自覚されるわけです(図48‐c)。この場合の飛蚊症は、しばしば「墨を流したような」と形容されます。
また網膜剥離では、飛蚊症と相前後して光視症(ぴかぴか光って見える、光が走るなどの症状)を自覚することもあります。光視症は、網膜が強く引っ張られるために起こる異常放電が原因と考えられています。顔面の打撲などで「眼から火が出る」というのがありますが、それも同じ理屈です。
墨を流したような飛蚊症、光視症を自覚したら、ただごとではないと思ったほうがよいでしょう。早急に眼科医に受診する必要があります。