運動器系の病気(外傷を含む)

血管肉腫

けっかんにくしゅ
Angiosarcoma

初診に適した診療科目:整形外科 皮膚科 皮膚泌尿器科

分類:運動器系の病気(外傷を含む) > 骨軟部腫瘍

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どんな病気か

 血管をかたちづくっている血管内皮細胞と呼ばれる細胞由来の肉腫です。発生率は低く、全肉腫の1%程度に過ぎません。転移(病気が最初に発生した部位から、悪性の細胞が血液やリンパ液の流れにのってのほかの臓器に移ること)や再発(手術した場所にもう一度病気が発生すること)が起こりやすく、治療の難しい肉腫のひとつです。

 手足の軟部組織のほか、皮膚や肝臓にも発生します。軟部組織に発生する例では、50代以降の比較的高齢の患者さんが多いみられます。

症状の現れ方

 比較的短い期間に増大する瘤として発症します。下肢に最も多く、次いで上肢、体幹部に発生しやすいといわれています。

 痛みを伴うことは少ないようですが、時に浮腫、循環障害、感染、潰瘍や出血を伴います(図59)。また、全体の約3分の1の症例で正常な血液の機能が損なわれており、貧血や血液凝固能(出血などの際に血液がうまく固まる作用)の異常がみられます。

 病気が進行すると、肺、リンパ節、骨、軟部組織などに転移し、全身的な問題を引き起こします。

検査と診断

 MRIなどの画像検査で病気の広がりを把握します。血液の検査を行い、血液の機能(貧血や凝固能)を評価します。

 診察や画像のみで病名を決定することはできません。小手術などで組織の一部を採取し、顕微鏡で観察を行うことで病名を確定します。

治療の方法

 再発を防止するため、周囲の正常な組織を含めて腫瘍を摘出する必要があります。画像診断や手術の技術が発達したため、昔と違って四肢切断術が行われる機会は少なくなりつつあります。しかし、潰瘍などからの出血が制御できず、ショック状態となり血圧が低下してきた場合などには、切断術が必要となることもあります。

 周囲の組織への浸潤傾向に対応するため、放射線療法が行われることもよくあります。皮膚に発生した例では、インターロイキン2など特殊な薬剤の投与が有効である例があります。

病気に気づいたらどうする

 がんセンターや大学病院での精密検査と専門的な治療が必要です。

関連項目

 血管腫

(杏林大学医学部整形外科学准教授 森井健司)

図59 血管肉腫図59 血管肉腫