運動器系の病気(外傷を含む)

〈小児(15歳以下)に多い骨折/下肢〉大腿骨骨折

〈小児(15歳以下)に多い骨折下肢〉だいたいこつこっせつ
Femoral fracture

初診に適した診療科目:整形外科

分類:運動器系の病気(外傷を含む) > 骨・関節の外傷(けが)

広告

広告

どんな外傷か

 大腿骨は人体最大の長管骨で、骨折が生じるには極めて強い外力が必要となります。受傷原因は交通事故が最も多く、ほかに遊戯中の事故、高所からの落下などがあります。

見落としやすい外傷と合併損傷

 交通事故などの強大な外力による場合は、他の部位の骨折や頭部、胸部、腹部の重要臓器の損傷を合併することが少なくありません。下3分の1の骨折では、主要な膝窩動脈や総腓骨神経などの損傷を合併することがあります。

症状の現れ方

 骨折部は内出血によるはれ、皮下出血、異常な動きを認め、起立は不可能になり、患肢の自動運動もできなくなります。膝窩動脈損傷があると足の指の色調は不良となり、足背部で拍動を触れなくなります。神経麻痺があると足首や足指の運動が不可能となります。

 骨折部でかなり大量の出血があるため、血圧低下やショック症状を起こすことがあり、合併損傷が多いほど強くなります。

検査と診断

 局所の症状で診断は容易です。X線写真で骨折部位、骨折型、転位の程度を調べます。

治療の方法

 小児の骨折の特徴が最も発揮される部位です。骨癒合が良好で、変形がよく矯正され、1㎝までの短縮は自家矯正が可能なため保存療法を行います。

 長期間ベッド上で固定されても全身的な合併症や関節の拘縮が起こらないので、年齢に合わせてベッド上でいろいろな牽引療法を行います。2〜3歳以下はブライアント牽引といって、垂直に両下肢を牽引します。ラッセル牽引は股関節を30度曲げた位置にして牽引し、3〜8歳児に行います。ウエーバー牽引は股関節と膝関節を90度曲げた位置にして、2〜12歳児に行います。

応急処置はどうするか

 副木をあて骨折部が動かないようにします。大量出血が予想され、さらにほかの部位に損傷を合併することがあるので、体を起こさずに横にしたまま運びます。

関連項目

 骨・関節の外傷総論

(藤田保健衛生大学整形外科学准教授 鈴木克侍)