呼吸器の病気

エキノコックス症(包虫症)

えきのこっくすしょう(ほうちゅうしょう)
Echinococcosis (Hydatid disease)

分類:呼吸器の病気 > 肺の病気/感染症

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 包虫症は、単包条虫と多包条虫による人獣共通寄生虫症です。前者は九州や四国など温暖な地方でまれにみられ、後者は北海道で多発しており、本州では極めてまれです。

どのように感染するか

 エキノコックスは、終宿主(キツネやイヌなど)の小腸に成虫が寄生し、糞便に排泄される虫卵を食物などといっしょに食べた中間宿主(ハタネズミなど)で、幼虫が肝臓や肺、脳などさまざまな臓器に寄生します。この中間宿主を終宿主が食べることによって生活環が成立します(図18)。

 ヒトへの感染は、川の水、山菜などが終宿主の糞便で汚染された結果として経口感染するとの可能性が考えられています。

症状の現れ方

 肝エキノコックス症では肝腫大、腹水、黄疸などの症状が現れ、最終的には肝不全となります。肺エキノコックス症では血痰がみられることが多く、胸膜炎や気管支炎を伴います。

診断と治療の方法

 初期では症状に乏しく診断は困難ですが、免疫血清学的検査(酵素抗体法で90%、ウエスタンブロット法で95%の陽性率)が有用です。

 本症に有効な駆虫剤はなく、外科的切除が原則です。

注意すべき点と医者への相談時期

 淡水産のカニやイノシシの肉を生で食べたり、不十分な加熱での摂取は避けてください。これらの食物の生食歴があり、好酸球の増加やIgEの上昇があれば肺寄生虫症を疑い、医療機関で胸部X線写真を撮影してもらいましょう。

(川崎医科大学呼吸器内科学講師 宮下修行)

図18 エキノコックス(多包条虫)の生活還図18 エキノコックス(多包条虫)の生活還