循環器の病気
アダムス・ストークス症候群
あだむす・すとーくすしょうこうぐん
Adams-Stokes syndrome
初診に適した診療科目:循環器科 内科
分類:循環器の病気 > 不整脈(脈の乱れる病気)
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どんな病気か
急に発生した極端な徐脈、心停止、頻脈のために、心臓から脳への血液の供給が大きく低下したり停止して、脳の酸素低下を来した場合をいいます。その結果、めまい・失神・けいれんが現れて死に至ることもある危険な状態です。
原因は何か
洞不全症候群・房室ブロックによる心停止か、心室頻拍・心室細動のような心拍数の極めて速い心室性頻脈(図23‐G)に分けられます。
本症候群の原因の50〜60%は房室ブロック、30〜40%が洞不全症候群とされます。残りは、心室頻拍(多形性心室頻拍トルサードポワンツを含む)・心室細動です。まれですが、心房粗動や心房細動でも心房から心室の伝導が過剰に亢進すると高度頻脈となり、脳の虚血に陥ります。
症状の現れ方
通常、脳の虚血症状が突然に現れます。症状の程度は、徐脈では心臓が停止している時間の長短に、頻脈では脈拍数と頻脈持続時間によって決まります。
そのほかに、脳の虚血が原因で起こる全身けいれんや、二次的な頭部外傷がしばしばみられます。症状が消失した時点では、神経学的な異常はみられないのが特徴です。
検査と診断
洞不全症候群で本症候群を来すのは、徐脈頻脈症候群が多いようです。頻脈も発作中の心電図の波形から診断されます。いくつかの疾患では非発作時にも心電図の異常があります。QT延長症候群、ブルガダ症候群、特発性心室細動、WPW症候群、不整脈源性右室異形成症などです。心臓の電気生理学的検査による頻脈の誘発試験は、診断に有用です。
治療の方法
徐脈が原因であれば、意識消失発作の予防にはペースメーカーの植え込みが必要になります。心室細動、心拍数が多い心室頻拍の再発が危惧される時には、頻脈発生に際してはそれを電気的に停止させる植込型除細動器の植え込みが必要になります。(コラム)。
病気に気づいたらどうする
症状が最初は軽くめまい程度で自然に消失しても、数時間、数日後に繰り返すおそれがあるので、早期に循環器専門医の診察を受けてください。
植込型除細動器
装置の概要
植込型除細動器は、命に関わる重症の不整脈を治療するための体内植込型治療装置です。この機械は不整脈の発生を予防するものではありませんが、常に患者さんの心臓の動きを監視していて、重症の心室不整脈(心室頻拍と心室細動)が発生した時にはすばやく反応して電気治療を行い、発作が死をまねくことを防ぎます。植込型除細動器は、一般的には英文名の頭文字をとってICDと呼ばれています。
植込型除細動器のシステムは約70gの本体と、それにつながるリード線から構成されています。本体は、電池とマイクロコンピュータが搭載されたチタン製の容器でできています。
通常、左前胸部の皮下に本体を植え込みます。リード線は血管(静脈)をとおして心臓内に留置します。リード線には、心内の心電図を植込型除細動器本体に送り、常に心臓の動きを監視するはたらきと、不整脈が起こった時に本体からの電気治療を心臓に伝えるはたらきがあります。
装置による治療の方法
植込型除細動器はあらかじめプログラムされた方法で、心室細動や心室頻拍を止めます。
たとえば、心室頻拍が起こった場合には、まず通常のペースメーカーのような電気刺激で頻拍より少し速くペーシングをすることで治療を始めます。ペーシングを中止すると心室頻拍も止まることがあり、これを抗頻拍ペーシング治療といいます(図24)。何回かこのような抗頻拍ペーシング治療を行っても心室頻拍が止まらない場合は、弱い電気ショックによる治療を行います。これをカルディオバージョンといいます。
まず弱い電気ショックで治療を行い、それでも止まらない時にはもう少し強いエネルギーを出すというプログラムを組むこともできます。この治療の時には“不意に胸をたたかれたような感じ”になります。一方、心室細動発作が生じた場合には、意識は完全に消失し、一刻の猶予もありませんので、ただちに強い電気ショックによる治療が行われるようになっています(図24)。
植込型除細動器本体内に搭載されたマイクロコンピュータには、生じた不整脈発作や治療の記録が保存されていて、担当医師が体外から別のコンピュータでそれを読み取り、あとで確認することができます。その結果をもとにして患者さんの病状に合うように、体外から電気治療のプログラムを組み直したり、服薬内容を変更したりすることができます。何回も電気治療が繰り返される場合には、心室不整脈を専門とする施設におけるカテーテル・アブレーション(心筋焼灼術)による治療が有効です。